広島・長崎と福島への影響2020年08月08日 10:44

最近のニュースによれば、米国では、日本への原爆投下は不要だったとの議論が戦争中からあったとのことであるが、これを補足するかのように、ソ連参戦で日本は降伏するので原爆投下は不要だと米国に進言していたというニュースもロシアから出てきた。
客観的にみると、広島型原爆は濃縮ウラン原爆で、長崎はプルトニウム原爆である。前者は確実に爆発するが、大きくて重く、大量生産ができない。一方、プルトニウム原爆は比較的製造容易で、小型だが、特性上爆発の失敗の可能性があるので実験が必要になる。
当時、ソ連との冷戦に突入することが確実だった米国にとって、プルトニウム型原爆の投下は実験とソ連への威嚇という意味で一石二鳥だったであろう。日本人としては許せないところである。
ところで、これら原爆による放射線被ばくの影響が戦後大規模に調査され、被ばく線量とがん発生の関係が正確に調べられた。これが放射線作業従事者や福島事故の線量による避難区域制限の基準となっているICRP(国際放射線防護委員会)の線量基準のデータベースとなった。しかし、これら二つの被ばくの形態は大きく異なる。原爆被ばくは爆発の一瞬、核物理的には10のマイナス6乗秒間で被爆したものである。一方、福島などでの被ばく制限は年間の線量で決めている。である。1年は10のプラス7乗秒のレベルである。即ち、時間で13桁も異なる生体現象を、時間で累積した被ばく量の比較のみで判断しているのである。
たとえて言えば、醤油1.8リットルの塩分を一気飲みすれば死んでしまうが、1年に亘ってちょびちょび摂取すれば料理がおいしく、体にも良い。これを醤油摂取量として一緒に議論しているようなものである。即ち、摂取期間が一瞬であろうと一年であろうと1.8リットル飲むと死ぬといっていることと同様の話である。
このようなICRP基準をもとに(実は当時の民主党政権がこれをさらに誤解して年間1mSvとしたのではあるが)福島の避難区域の線引を決めて無用とも思える被害を広めているのが、広島・長崎の福島への影響ということになる。
例えば、医療用放射線治療では、がん細胞を照射するだけでなく、周囲の健全細胞も1時間に1000mSvレベルで照射される。これはICRP基準では半数死亡レベルである。これが福島の浜通りではmSvレベルの被ばくでがんになると言われて避難し、一方、郡山などの医療用放射線治療施設では、数千mSvの被ばくでがん治療をしているというおかしい話の理由ということになる。したがって、ICRP基準を原爆被爆者データベースにおける時間累積線量で決めるのでなく、照射時間の長さを考慮したうえで見直すことが絶対的に必要である。医療用放射線被ばくは医療用だという理由だけでICRP基準適用を免れているということがこれらの矛盾の根源にある。長時間被ばく者が少ないので見直しが難しいというのであれば、医療用被ばくでの再発がんが実際のところどうなのか、詳しく調査すべきであろう。