米国議会乱入事件と国立歴史博物館の役割2021年01月26日 05:10

 ナショナルジオグラフィック日本版最新号に、あるトランプ支持者の乱入事件時の発言が出ていた。その人はごく普通の50代で、一緒の子供たちに
「自由を守るには力が必要だ、実力で自由を守らなければならない」と話していたそうである。彼は特に迷彩服を着ているわけでも、武装をしているわけでもなく、人々の列に従って並んでいた一見一般人である。この言葉を聞いて、なぜ彼らが民主主義の殿堂である議会議事堂に乱入することになったかその理由が分かった気がした。

 ワシントンの地図を見ればわかるが、ホワイトハウスの前から議会議事堂に向かう公園を左に曲がる位置に、国立米国歴史博物館がある。ここは、多くの小学生たちが米国の歴史を学ぶために訪れる教育施設でもある。しかし、その中の殆どの展示は米国の戦争の歴史である。開拓時のネイティブとの闘い、独立戦争、スペインとの闘い、欧州戦線、そして太平洋戦争、冷戦と戦争の詳しい歴史が続く。そして、説明に何度も出てくるのは、立国の精神である自由を守るには武力が必要であり、国民はその戦いに参加する義務があると繰り返し教え込まれるのである。

当日デモ隊はホワイトハウスからこの歴史博物館の前を通って、議事堂まで進んだ。そして、自由を守るためには、実力でそこで行われていた不正な選挙(と思い込んでいた)の実現を阻もうとしていたわけである。

米国の自由と民主主義はある面で両立できないということを示した事件だった。