福島事故から10年2021年03月07日 04:20

(1)福島1F事故の原因は何か。
(2)原発をどうするか。
この2つの質問に答えるのは難しいが、あえて回答を作ってみる。

(1)事故原因には大きく分けて2つある。
直接的な原因と歴史的な要因。
直接的な原因は、全電源喪失を考慮しなかった設計。
歴史的な原因は、米国の設計をそのまま受け入れ、設計変更や設備更新をしようとしなかった体制。
この2つは関係している。
1960年代に福島1Fの建設は始まったが、これは当時自主開発を目指していた原研と政府、電力が対立し、電力の意向で米国GEからのBWR導入が決定した。当時、土光敏夫氏はGEの設計のチェックを申し入れたが、GE側は設計変更をするならプラントの提供をしないと回答してきた。米国の原発はアイダホの砂漠に建設された世界初の原発EBR-1が基礎にあり、竜巻対応の配置設計のため、非常用電源が地下にあり、津波には弱いプラントだった。これが東日本大震災では全電源喪失につながった。
日本ではいったん役所が許可したプラントの設計変更や設備変更が、官僚主義により難しいことがこの事故の歴史的原因の中心であろう。
そのために、タービン建屋地下に配置された非常用電源の電源盤が海水に浸かったままになり、全電源喪失につながった。また、全電源喪失時の対応もあり得ないものとされていたので対応できず、大事故につながった。
(2)原発をどうするか。
その前に、放射線被ばくに対する考え方を整理しなければならない。これは事故対応上も重要であり、事故の拡大につながっている。即ち、事故時に2つの大きな対応ミスがあった。
一つは被ばくを恐れて運転員、作業員の活動が大きく制限されたこと、二つ目は爆発後に政府が福島のサイト周辺をすべて避難区域にしたことである。これは両者とも、国際放射線防護委員会ICRPによる被ばく管理基準に従ったものである。それが本当であれば、あの事故とその後の経緯は歴史的に必然のものであろう。しかし、被ばく規制法令のベースであるICRPの基準は、主に広島・長崎の被ばくデータの統計処理で得られた疫学データに基づいて設定されている。これは原爆の被ばくなので、1マイクロ秒での被ばくである。一方、今回の事故の被ばくは短くても数分、長ければ1年単位での被ばく時間の時間積分量である。6桁以上の差がある時間の被ばく影響を、被ばく量という時間積分量という値だけで考えている。これは醤油1リットルを一気飲みすると死亡するが、1年に亘って摂取すれば健康に良いという話を単に醤油1リットルが危ないといっていることに似ている。このICRP基準の見直しができなければ、日本人の放射線に対する意識は変わらず、原発の将来はない。
数ミリシーベルトの被ばくでがんになる可能性があるとICRP基準では言っている。しかし、同じ放射線によるがん治療は10シーベルトレベルの放射線を健全細胞も含めて照射し、がんを治療している。ここにも6桁以上の差がある。放射線治療も1時間レベルでの被ばくであることがこの矛盾のなぞを解くカギである。
即ち、原爆のような一瞬の被ばくと、放射線治療や一般の原子力施設からの放射線被ばくとでは醤油の一気飲みと調味料として1リットル摂取する場合と同じで逆の人体影響になりうる。このことに多くの人々が気付けるかで原子力の将来はきまるであろう。
しかし、日本がどうであれ、中国やロシア、インドなどの大国は原子力を地球温暖化対策の中心に据えている。それらの諸国の原子力開発が日本の二の舞にならないよう、即ち、欧米の原子力技術の単純な導入とならないよう忠告、監視するのが福島事故を経験した日本人としての義務かもしれない。現に中国の原発設計は米国やフランスの技術に基づいたものなのである。
海外技術に頼った原発から早く脱却し、新たな放射線被ばく基準のもと、自主、民主、公開の原子力三原則に立ち返って真に科学的、民主的な原子力開発を進めるべきであろう。

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