福島の甲状腺がん若年者患者に対して補償すべきだ2022年01月21日 05:33

 福島で甲状腺がんに罹患した若者が、東京電力を訴えた。
この訴訟に対し、国は補償すべきたと思う。
それは、トリチウム水放出に対する風評被害を受ける漁業者も同様である。
 甲状腺がんは、2012年ごろ、韓国の女性で10倍以上に急増した。
https://s.japanese.joins.com/JArticle/162430?sectcode=400&servcode=400
福島事故と同じタイミングでもある。しかし、その原因は、乳がん検診と同時に甲状腺がんの検診も同時に受診することが推奨されたためと言われている。受診者が増えると患者が増える、即ち、過剰診断と呼ばれる現象がおこったのである。そのため、従来放置されていた甲状腺がんの患者が掘り起こされたのである。
 それが良いことか悪いことかはともかく、福島の事故ののち、若年者の甲状腺がんの検診が大規模(30万人以上)に行われ、数百人の甲状腺がん患者が見つかったのである。
 甲状腺がんの治療にも放射線治療がある。
https://www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp/medicine1/1445/1447/1455/8765.html
 これは放射性ヨウ素-131を内服し、甲状腺に集中的に放射線を照射する医療である。
 誤解しやすいが、原子力事故対応で事前に飲むよう配布されているヨウ素剤はヨウ素-127で安定同位体である。事故で放出される放射性ヨウ素が甲状腺に集積するのを防ぐ効果がある。
一方、ヨウ素-131は甲状腺がんに集中的に放射線を照射するが、残念ながら放射線の飛程のながいガンマ線も放出する。これは甲状腺の中の健全細胞も照射する。ヨウ素-131の半減期は8日(69万秒)である。これだけゆっくり照射されるのである。
一般に放射線治療は数シーベルトレベルの放射線を照射する。
福島での空間線量は数ミリシーベルトレベルである。なぜ、ミリシーベルトレベルの照射でがんが発生し、シーベルトレベルの照射でがんが治療できるのであろうか。このパラドックスの理由は、ICRPや国の線量基準が原爆の瞬時照射(数マイクロ秒で被ばくした)のデータに基づいており、福島やがん治療の数時間~年での照射と単位時間当たりの照射量が桁違いなためである。
 もともと広島・長崎の放射線被ばく線量には、福島で問題になっている核分裂生成物の崩壊による被ばく線量は含まれていない。それは、原爆爆発時の瞬時照射による被ばく線量に比べ3桁程度小さく、影響が小さいと考えられたためである。
(https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/134985.pdf、p.9)
 更に言えば、広島・長崎の従来の線量評価方法はかなり古い計算手法に拠っており、精度は低いと言わざるを得ない。大学の研究者でも最近手法との違いを指摘している。ただ、その指摘においても、時間線量率や遅発ガンマ線と即発ガンマ線の相違や、人体影響についての考察がなく、時間積分線量だけの議論となってICRPの基準と大差がない超保守的で逆にリスクがある見解となっている。
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/IPA/DS02/Final_pdf/Fujita.pdf
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/IPA/DS02/Final_pdf/Imanaka-1.pdf

 分かりやすい譬えでいえば、アルコールや塩、醤油は一気飲みすると死亡するが、毎日少量飲めば健康に良いということである。生体、細胞、DNAは慢性の外的刺激には強いまた免疫反応があるということである。当時はそこまでDNA研究が進んでいなかったとはいえ、これを無視して決めた、米ソ核戦争で兵士を守るために作成したICRPによる被ばく基準がそのまま福島の被ばく基準に適用されているのがこのパラドックスの根源にある。
 トルーマン大統領は、濃縮ウラン型の広島の投下のあと、状況の詳細が日本政府に伝わる前に、長崎にプルトニウム原爆を落とした。米ロ核戦争では、大量に作れるプルトニウム原爆を落とした。これは米ソ核戦争に備えた人体実験としか解釈できない。そして、米国政府関係者は、終戦後、広島、長崎に即座に調査に入り、あのICRP基準のための被ばく者調査を始めたのである。その基準が再度、福島の被災者を苦しめているという構図になっている。米国の基準を無批判に受け入れてきた日本政府も関係者もそして国民もその責任がある。

 特に、マスコミ、ネット関係者は最近のコロナ禍においても、数値の単位に無頓着である。コロナ発症者が一日当たりなのか、累積なのか、グラフには明示されていない。このような情報をネットを含め拡散され、1年当たりの数値でもマイクロ秒あたりの数値も同じように受け取ってしまう人間を世界中に広めている。情報機関や医療関係者はそのような誤解をあえて指摘しないようにしているように見える。なぜなら、軍事機密や医療に関する特権を失いたくないからではないだろうか。
 
 ヨウ素-I131によるがん治療は100万秒のレベルでゆっくり照射されるが、これがマイクロ秒レベルのように瞬時照射できる取り扱い可能な放射性物質があれば、その照射でがんは治癒ではなく、逆に急激に増大するだろう。ただし、そのような人体実験はできないので、現在の医療では、数日かけてDNAの修復機能が有効な範囲で照射している。
放射線照射によりがん細胞が健全細胞に比べ、選択的に壊死するのが放射線がん治療の原理である。
 がん細胞は分裂が活発で分裂周期が短いため、DNAの2重らせんがほどける機会が多い。一方、健全細胞は短時間では殆ど分裂しない。すなわち、がん細胞のDNAは不安定な一本DNAになる時間が長いため、放射線で細胞中に発生した活性酸素の影響で、化学変化を生じDNAが損傷して壊死すると考えると理解しやすい。

 しかし、上記の韓国女性患者のような過剰診断状態に最近の福島の若者を追い込んだのは、福島の原発事故とその対応としての国の基準の設定にあることは、明白である。
 従って、今回診断された甲状腺がんの発生要因は別にあるだろうが、国と東電は若者に補償する義務がある。