広島原爆と長崎原爆の4重の被害と今後の影響2022年08月06日 09:50

 今日は広島の原爆記念日であり、9日は長崎の原爆記念日である。改めて原爆の廃絶を願わざるを得ない。
 ウクライナの事態を受け、一部に核シェアリング論がでているが、アメリカは日本をそれほど信用しているわけではない。また、ペロシ下院議長が広島を訪問しなかったのも核兵器に対する米国の一部の立場を象徴しているだろう。
 それは広島に続いて長崎にも原爆を投下したことと関係している。当時のトルーマン大統領は、日本よりもソ連の脅威を強く感じていた。そのため、核爆発が確実に起こるが大量生産は難しい濃縮ウラン型原爆だけでなく、当時同時に開発されていたプルトニウム型原爆を長崎に落とした。日本がポツダム宣言を受け入れる前に実験する必要があった。広島型原爆で用いられた濃縮ウランの生産には大量の電気と大掛かりな化学プラントが必要だが、プルトニウムは専用の小出力原子炉で容易に発生するので、対ソ連向けの兵器として大量に短時間で生産できる。
 現在の世界の原爆は殆どが金属プルトニウムと核融合による中性子増倍ブースターの組み合わせでできている。しかし、当時は核融合ブースター装置は発明されていなかったので、プルトニウム型原爆が確実に爆発するのか開発者の間でも不安があったのである。そのため、米国は急いで長崎で実験を行ったとしか思えない。
  ウランの同位体と異なり、プルトニウムには自然に核分裂をして、中性子を発生する同位体が含まれている。それはプルトニウム239が原子炉内で中性子を吸収して生成されるプルトニウム240である。原爆の作動原理は、まず、核分裂性の物質を周辺のダイナマイトで圧縮し、十分臨界性をあげた時点で外部から中性子を投入する。その結果、大きな爆発力を得られる。しかし、圧縮途中で中性子が投入されると、その時点で核分裂による熱膨張が発生して未臨界状態に戻り、十分な爆発力が得られない。プルトニウム240による中性子発生が一定以上であると、このような不完全爆発になってしまう確率が増大する。(これがプルトニウム240を多く含む一般の原子炉燃料が核爆発に利用できない理由の一つでもある。)
 従って、トルーマン大統領は、広島に続き、長崎でプルトニウム型の原爆投下をせざるを得なかったのである。
 この二度の被災の結果、日本には更にその後二つの悲劇に襲われることになる。
 即ち、第3の被害は主に広島・長崎の被爆者調査データに基づいたICRPによる被ばく基準の設定に関わる問題である。
 ICRPとは、国際放射線防護委員会(International Commition on Radiation Protection)の略称であり、任意の民間団体だが、歴史的にはX線の医療被ばく被害を防ぐため1930年代に設立された国際X線ラジウム防護委員会がその前身であった。放射線防護に関する基準値の勧告を出しており、各国政府はそれに従っている。日本の法律もICPRの勧告に準拠している。最近の勧告であるICRP Publication2007では広島・長崎の被ばく者発がんデータなどをもとに年間線量基準を勧告している。
 しかし、その低線量域での疫学データが統計的に十分な精度がないため、LNT仮説と言われる直線外挿モデルを採用しており、線量がいくら低くてもある一定の影響があるとしている。
  このデータの元になっている被ばく者データは放射線影響研究所が整理しているが、原爆の軍事機密の影響で、放射線の線源のデータは日本側には十分に公開されていない。広島と長崎では異なる傾向もあり、それが濃縮ウラン型とプルトニウム型の影響を受けている可能性もあるが、詳しいことは公開されていないので精度を向上するには一定の制限がある。また、なぜ、瞬間的な被ばく(原爆では1ミリ秒内で放射線の大部分を被ばくをしている)が1年間の被ばく基準の設定に用いられているのか説明が不十分なままである。
 また、事故時の被ばく基準を通常時とは別に設け、5年間は通常時の20倍まで許容するとしている。その根拠もあいまいなままである。
 この結果、原爆の影響による第4の被害が近年発生した。それが福島事故時の避難区域の線引きである。当時の厚労大臣がこのICRP基準の曖昧さを適用すべきかどうかの専門家の議論を打ち切り、独断で通常時の被ばく基準を用いてしまった。
 仮に上記の事故時の被ばく基準を適用していれば、一般人の避難者は殆ど生じなくて済んだのである。
 これらの曖昧さはもとはと言えば原爆が軍事利用であったためであり、広島・長崎が無ければ、福島の避難民の問題も発生しなかったと言えるのである。
 そこを勘違いして、ICRP基準による現行規制が正しいと信じているマスコミや多数の住民が今後第5の悲劇を引き起こすことであろう。
 それは、話が飛ぶが、太陽フレア爆発による航空旅客、宇宙旅客における白血病とがん発生の増大である。
 その問題を元JALの機長である杉江弘氏がブログで報告している。
https://biz-journal.jp/2018/12/post_25921.html#google_vignette
 杉江氏指摘の宇宙放射線に関する問題をさらに詳細に分析してみると以下の問題が隠されていることに気が付く。
 年に数回発生する太陽フレアの爆発は従来、磁気嵐の発生は問題にされてきた。しかし、太陽フレア爆発は多量の放射線を発生する。その中には、陽子、中性子に加え、ガンマ線も含まれる。これはその爆発の瞬間に発生する中性子が太陽表面で更に反応して発生する捕獲ガンマ線によるものである。このガンマ線による飛行機の乗客などの被ばくは、原爆の被ばくと同じく瞬時被ばくである。
 太陽フレア爆発は、太陽表面での異常な核融合反応(重水素と重水素が融合)であり、大量の中性子を発生するが、その中性子が太陽に微量に含まれる酸素、窒素など軽い元素に捕獲されて瞬時にガンマ線を発生し、光速で宇宙空間に放射するのである。
 地表にいる人間は大気(水10メートルの厚さに相当する遮へい能力を有する)により、このガンマ線の被ばくはほぼ受けないが、成層圏に近い高空を飛行する国際線旅客、CAや宇宙飛行士はこの影響を多く受けることになる。しかも、その被ばくはこれまで十分に測定されたことはない。今でも太陽フレアの発生自体はこの光速で地球に到達する電磁波(ガンマ線もその一部)により検知しているので、遅れて地球に到達する陽子や中性子の被ばくと異なり、原理的に防ぎようがないのである。
 太陽フレア発生時に飛行中だったパイロットは、航空会社により勤務体制の調整を受け、被ばく量が偏らないように平準化しているらしい。
 しかし、これを知らない一般旅客やCAは被害を受ける可能性が強い。現状のICRP基準は年間被ばく量だけを制限しているので、このような瞬時被ばくに対しては何も規制がないのである。その結果、杉江氏が指摘しているようにCAは白血病の確率が高くなり、一流のスポーツ選手など世界中を飛び回る人々も白血病や固形がんの発症確率は高くなる。
 人体細胞は、放射線に対する免疫機能を発達させてきたが、原爆や太陽フレアなどの瞬時被ばくは、人類が歴史的に出会ったことがない事象であり、免疫機能によるDNA損傷修復が間に合わないタイムスケールでの事象(1ミリ秒レベル)なのである。免疫機能は細胞内の化学反応なのでこのような瞬時に大量に発生するDNA損傷を十分に修復できず、生体内に残してしまう。これが白血病やがん発生につながるのである。
 今後、更に海外旅行や宇宙旅行の機会は増大する。それらの人々のために、瞬時被ばくと年間被ばくの基準を個別に設けるよう、日本を含め、全世界が基準の改正を実施すべきである。そのためには、地球物理学者、医療被ばく関係者も含む新たな委員会を日本主導で設立すべきである。それが、原爆による度重なる被害を受けた日本だけが果たすべき責務だろう。