長崎原爆の日におけるICRP被ばく基準批判2022年08月09日 13:09

 環境省のICRP説明関連ページ
 202003mat1-04-5.pdf
によると、

「国際放射線防護委員会ICRPの勧告の目的の一つは、放射線に対する防護体系を構築するための考察や仮定を与えることによって、確定的影響の発生を防止することにあります。
IRPが根拠としている原爆被爆者のデータは、1回の被ばくである一方で、管理すべき被ばくのほとんどは、長期間の少しすつの被ばくです。そのため、低線量・低線量率による影響軽減分の補正が行われています。動物実験やヒトの細胞における染
色体異常や突然変異誘発の結果等から、様々な数値が報告されていますが、防護のためには係数として2を使うと定められています。つまり1回被ばくに比べ、少しすつの被ばくでは、同し総線量を受けた場合の影響の出方が半分になるということです。」

となっています。

 しかし、この係数2の根拠は何も明らかにされていません。
しかも、原爆の被ばくとは、放射線影響研究所の最新の原爆線源データ報告DS02のP.140にも示されているように、広島、長崎ともに1マイクロ秒以下の瞬間被ばくです。
 1マイクロ秒と1年では13桁もの時間の差があります。即ち単位時間当たりの線量、即ち、線量率が13桁も違うにも拘わらず、その時間線量率の差の影響をわずか2倍として扱っています。免疫機能の観点からは時間線量率が高いほど、即ち、原爆のような瞬時被ばくであるほどDNA修復が難しくなります。従って、線量率が高いほどDNA損傷が生じる確率はあがりますが、ICRPの考えでは、13桁違う線量率に対し、その効果を2倍しか見積もっていないという訳です。
 このような非常識な処理をしているところに現在のICRP勧告のいい加減さがあります。そして、ICRP勧告に従っている現在の日本の法令上の被ばく基準値も同じく大きな問題点があります。

 ICRP勧告に従った政府の指示により、福島の汚染区域の住民は不要な避難を強いられ、多くの間接的な被害を受けました。その中には一家離散や高齢者の避難に伴なう死亡事例もありました。
 また、航空機の旅客やCAなど、太陽フレアによる瞬時被ばくを受ける可能性のある人々も単に年間積分線量による基準を満足していれば、瞬時被ばくからは何の保護も受けられていません。

 それが、線量率効果に対して殆ど何も考慮していないICRP基準を時間積分線量の条件が単に安全側だからと受け入れた歴代政府の責任と米国の軍事機密の壁を破れず、放射線線源データを米国のデータに頼ってきた日米政府設立の放射線影響研究所の問題点があると考えられます。

 今後は日本独自で原爆被ばくの時間データを精査し、ICRP基準に代わる真の時間線量率影響を考慮した新たな基準を確立すべきでしょう。