紫外線と電離放射線の人体影響比較2022年11月10日 05:13

 紫外線照射ランプの効能書きによれば、UV-Cの吸収により、O2分解化学反応によるオゾン(O3)、及び、紫外線の直接的な殺菌作用により、ウイルス及び細菌が分解されることになっている。
 即ち、代表的な活性酸素であるオゾンによるDNA分解、及び、紫外線の直接作用によるDNA分解である。

 これはちょうど、電離放射線であるガンマ線の生体影響やがん発生メカニズムに関わる、細胞中の水分子分解による活性酸素の生成、及び、DNAの直接的分解に対応する。

 紫外線も電離放射線も同じ電磁波なので、多少エネルギーレベルは異なっても同じような影響を及ぼすのは理解できる。ただし、ガンマ線は生体内部まで到達するが、紫外線は生体表面で皮膚がんを生じる程度であることの相違はあるだろう。

 では、どのように使い分けができるだろうか。
 紫外線は水中では急速に減衰するので、空気中での利用が効果が上がる。すなわち、酸素の分解によるオゾンが活性酸素としてDNAを分解する効果である。
 ガンマ線は水中でもある程度深く侵入できるので、生体内部でも活性酸素を生成できる。これががん治療にガンマ線が用いられる理由である。

 即ち、活性酸素を利用する殺菌法は紫外線なら空気中の殺菌が有効であり、ガンマ線なら水中、生体内部での殺菌に有効であるという使い分けが考えられる。

 次にこれらの電磁波は直接DNA鎖を分解することも可能である。
 ただし、DNAは細胞内では水の1/10000程度しか存在していないので、活性酸素による殺菌よりは寄与は小さい。すなわち、直接影響を及ぼすには高強度(光子密度が高い)の紫外線、ガンマ線が必要となる。
 
 どの程度の強度が必要かは、細胞サイクルの長短に強く関係する。
細胞サイクルとは、細胞が分裂、増殖するための必要時間である。一つの細胞が2つの細胞に増殖する際には、DNAの2重連鎖の分離、複製、細胞膜の形成といった一連の生体活動が必要だが、その各ステップごとにその活動が正常に行われているかチェックする仕組みが細胞自体に備わっている。そして、異常があれば細胞自体の免疫作用で正常な細胞となるように修復活動を行う。電磁波でこの活動を阻害しようとする場合、この修復活動が間に合わない程度まで強力な(光子密度が高い)電磁波を与える必要がある。
 細菌やがん細胞の場合は、もともと増殖活動が活発、すなわち、平均的な細胞サイクルの時間が短いので、比較的低強度の電磁波で分裂活動を停止できる。
 ただし、目や皮膚などの健全細胞はがん細胞ほどではないが、分裂活動は比較的活発なので、低強度でも影響を受けやすい。
 これが紫外線を目や皮膚に受けないほうが良いといわれる根拠である。
 即ち、紫外線による直接的なDNA損傷を避けるには、生体の表面細胞を保護する必要がある。一方、ガンマ線による影響を避けるには、高強度のガンマ線(時間線量率の高いガンマ線)を避ける必要がある。すなわち、原爆や太陽フレアなどによる瞬間的な被ばくである。
 
 したがって、よく殺菌用に用いられるUV発生器については、皮膚表面のみ薄い樹脂(プラスチック等)で保護すること、及び、オゾンを取り込まないこと(肺胞や目の表面細胞の保護)が重要となり、ガンマ線照射については、瞬間的な高強度被ばくを避けることが重要である。

 ただし、これらの制限値については、未だ、明確な値は揃っていないので、自分の感覚(オゾン臭さ、日焼けによる皮膚表面の痛み、高強度被ばく時の高濃度活性酸素による疲労感、体内感覚異変)に頼るのが一番であろう。(生体内の活性酸素は、新陳代謝による生成がほとんどなので、ガンマ線照射で通常とは異なる多量の活性酸素が発生すると異常な疲労感を感じることになる。)