全面核戦争で人類は本当に絶滅するか2022年10月12日 06:00

 ロシアのウクライナ戦争状況から、世界核戦争の可能性が出てきたとの報道がある。その全面核戦争で、人類が絶滅するかどうか、現有データから試算してみた。
 嘗て、全面核戦争を描いたネヴィル・バートの小説「渚にて」では放射線障害で北半球の住民は死滅し、残ったオーストラリアでも放射能汚染で住民は死滅していくとの記述があるが、広島・長崎などの現状からも、残留放射能による影響は小さいと考えられる。即発放射線の影響を含め、現時点ではどのような状況になると予測されるだろうか。

 https://hiroshimaforpeace.com/nuclearweapon2021/
によれば、
保有核弾頭数は
 米国 約5600
 ロシア 約6300
 全世界合計 約13000

である。10月8日のブログ記事の多田将の核兵器「核弾頭」によると核出力はTNT火薬換算で、0.1キロトンから数千キロトンまで広範囲にわたっている。最大のものは、ロシアで2万キロトン、米国で2500キロトンであるが、もっとも多いのは米国のW88型で455キロトンなので、、平均1000キロトンとすれば妥当な数字であろう。
即ちTNT換算で、総核出力は13000×1000キロトンということになる。

広島の原爆は16キロトンと見積もられている。即ち、全面核戦争では、広島型原爆の
 13000×1000/16=8.13E7
即ち約80万個分の核爆弾が使われる。

広島で影響を受けた面積を100平方キロ(10キロ×10キロ)とすると、80万個では、総面積1×10の8乗平方キロとなる。

一方、世界の陸地の総面積は1.5×10の8乗平方キロであるので仮に一様に世界の陸地で核爆発が生じたとすれば、3割方は大きな被害は受けない。

勿論、人口密集地に集中的に核攻撃されるだろうから、人口の多くは亡くなるだろうが、砂漠地帯や島嶼部など人口密度が低い地区は被害を受けない可能性のほうが大きいということになる。

残った放射能汚染による被害は1か月もすれば問題ないレベルに落ち着くことは広島・長崎で実証されている。

従って、全面核戦争になると予測される場合は、できるだけ、人口密度の低い核攻撃されない地区に移動するか、世間に知られていない地下施設で一か月程度暮らすことで、大きな被害をうけることなく生き延びられると考えられる。

予測できないのは都市部の地下街に避難した場合である。これは、数回の核攻撃を受けることで、地下街自体が破壊される可能性があり、集中的に核攻撃された場合には生存確率は低くなるであろう。
 
広島型原爆で約500メートル上空からの衝撃波に耐えられるコンクリート厚さは2メートル程度である。広島型16キロトンより大きい1000キロトンクラスの核爆弾であれば、数回の衝撃で、通常の地下街は破壊される可能性が大きい。特に地上爆発では地下街の破壊確率は高くなる。また、放射能汚染レベルもその分高くなるので、1年程度は地下生活が必要になり、換気フィルターの維持も困難だろう。また、都市の住民を長期間地下に収容すること自体が困難だろう。

従って、全面核戦争の場合、都市部から離れた島嶼部や山奥での生活を行うことで生存確率を大幅に上げることができるはずである。日本本土や沖縄は米国など基地が点在しているので、生存確率は低いが、伊豆諸島や小笠原などでは、「渚にて」のオーストラリア住民に近い状況となることが予想される。そのため、島嶼部では長期に自活できる準備を今から始めたほうが良いと思う。自活できる工夫は日本自体でも必要になってはいるが。

なお、核爆発における災害については、高田純「核爆発災害」医療科学社(2015)に詳しい。但し、著者は、人体の放射線障害の大きさの判断基準として、ICRPによる被ばく基準を拠り所としているところに留意すべきである。