ふじあざみラインでのバス事故原因推定2022年10月14日 06:16

 14日昼頃に大型観光バスが静岡県小山町のふじあざみラインで横転事故を起こした。
 この事故の発生個所は、須走5合目から実質1.5車線の緊張する細道を降りてきて馬返しと呼ばれる地点を過ぎたのち、通常の2車線となった100メートルほど下った道路が、枯れ沢の上で一旦平坦になり右カーブとなった先の地点である。映像をみるとその地点の道路の左側から舗装面に向けてうすく土砂が2~3メートル流れ込んでいて、バスはその土砂に乗り上げたために横転しているようにも見える。ニュースでは左側のり面に乗り上げたための横転したと言っている。
 推測だが、運転手は、馬返しまで下りてきて、広い2車線になって緊張がゆるみ、下り坂でスピードがでたまま、現場に突っ込んだと思われる。沢を渡るところは平坦になっているので、バスはその平坦地でバウンドし、前車輪の荷重が減少する。この先は右にカーブしているので、右にハンドルを切ったが、左側面の薄い土砂に乗り上げ、スリップして横転したーという状況なのではないだろうか。
 この沢を渡る部分の平坦地は、左側から常に小富士側からの風が吹いており、細かい砂の粒子が堆積しやすい地点である。これが更にスリップしやすい要因になったと思われる。

 この地点は、冬にスキーで降りてきてもスピードをできるだけ落とさずにこの平坦面に入り、惰性で右カーブを切り、その先の数メートルの坂を登りきるという地点である。バスのタイヤには残念ながらスキーのようなエッジはついていない。
 ちなみに、エッジのない距離スキー用のスキー板では急カーブを曲がることはまず不可能で、スキー部のプロでも横倒しになってしまう。

 数年前の春にこの枯れ沢の付近は大雨に見舞われ、上流から大量の土石流が一帯を襲い、通行止めになって復旧工事が行われた箇所である。この工事で、沢の上部には大きな砂防ダムが数段に渡って構築された。

 事故時点で舗装面にある土砂は、砂防ダムの効果が届かない尾根の側面から、最近の雨の影響で流れ込んできたもののようにも見える。

 この事故は、山道から広い2車線に出て、油断した一瞬のスキをついて起こった、但し、その地点はスリップしやすい条件が揃っていたためだろう。バスのブレーキ、エンジンブレーキに不具合があった可能性も考えられるが、運転では安全そうに見えても常に緊張している必要がある。

 ただ、ブレーキやエンジンブレーキがこの地点で急に不具合が生じたとすることには疑問がある。馬返しよりも山側のほうが急でカーブが多いので馬返し以前で事故が起こる可能性が大きい。

 おそらく、馬返しを過ぎて道が広くなり、気が抜けたまま枯れ沢の地点まで十分減速しないまま突っ込み、ブレーキをかけたが、上記の理由でタイヤがスリップしてハンドルが効かないまま横転したということではないかと推定される。

(16:00修正追加)
ニュースによれば、運転手は事故直前にブレーキを数回踏んだが、効かなかったとのことである。これは、馬返し前の急坂部分までにエンジンブレーキを使わずにフットブレーキに頼って減速を継続してきた可能性がある。即ち、これは、数年前に碓氷バイパスでスキーバスが道路から落下して多数の学生が死亡した事故と同様である。
最近の大型バスのエンジンブレーキは特殊で、ギアを保護する回路とリンクしており、トラックなどとは異なって場合によっては効かない機構になっているようだ。この機構の特殊性を運転手が十分訓練、認識していたのか、確認する必要がある。)

(16日修正追加)
 15日のニュース報道によれば、運転手は400メートル前からブレーキの効きが悪くなっていたということである。また、テレビ映像では、横転地点の手前約15メートル付近の右車線から横転地点まで白いタイヤ痕が見える。
 一方、steerlink.co.jpのサイトによれば、トラックの排気ブレーキ(乗用車のエンジンブレーキが更に強力に効くよう排気バルブをスイッチにより閉める装置)では、後輪のみに作用するので、前輪がスリップしやすくなる。
 これらのことから以下の推定ができる。

 事故地点の400メートル手前というと、馬返しの上部であり、山スキーで降りてくるとそれなりに急坂でカーブが続き気持ちよく滑れる地点である。ここまで、大型バスでフットブレーキを多用して下りてきた場合、次第にフェード現象でブレーキが効きにくくなってくるはずである。
 馬返し地点を過ぎると急に道幅が広くなり、直線となるので、安心してブレーキからしばらく足を外したのであろう。しかし、スピードが出すぎて、ブレーキを踏んだが、効かず、排気ブレーキのスイッチを入れた。そのため、後輪のみが急激にブレーキがかかり、前輪が浮き気味になった。道は右カーブしており、ハンドルを右側に切ったが、事故地点では細かい土石粒が溜まっていたため、前輪がスリップしながら左斜面に突っ込んでいった。そして、横転したーという経緯ではないだろうか。

16日のニュースでは400メートル手前から事故地点まで断続的にブレーキ痕があったということである。こうなると5合目から400メートル手前の地点までの排気ブレーキの使い方が問題となる。この長い下り坂を十分エンジンブレーキを効かせないまま下りてきて、フェード現象を起こしてしまったようだ。これは、数年前の碓氷バイパス事故と同様、ギア操作のほうに問題があったと推測される。碓氷バイパス事故のバス運転手も大型バスのギア操作に慣れておらず、低速ギアにうまく入れられなかったために十分なエンジンブレーキ効果が得られなかった。そして高速でカーブに突っ込んでしまった。
これは、徐々に低速ギアに入れないと、ギア機構の破損を守るためにギアシフトダウン操作が運転手が気が付かないままキャンセルされてしまうという危険なものである。これは当時実用化されつつあった、大型バスのオートマ機構の特長である。碓氷バイパスの事故当時もこの機構の危険性は分かってはいたが、現在までに改良されてこなかのかもしれない。

(17日追加)
17日のニュースでは乗客の事故時の証言が出ていた。すでに、馬返し地点で運転手は非常事態に気が付いていたらしい。広くなった2車線道路の右側を走り、事故地点の左側の側面に意図的に突っ込んでいったようだ。こうなると上記のような排気ブレーキ、エンジンブレーキの使用方法を間違ったか、車体に何らかの異常があったかのどちらかが原因ということになる。

ロシアの戦術核利用の可能性について2022年10月14日 17:13

 ロシアの対日本報道機関スプートニク日本は10月11日付記事

「核のレトリック:虚偽報道?それともハルマゲドンは現実なのか?」
https://sputniknews.jp/20221011/13298037.html

において、ロシアの核使用はゼレンスキー大統領の夢物語であり、ロシアにはその必要性がないという見解を示している。

 この記事の筆者の趣旨は、ロシアが核を使用することで、NATOがウクライナ戦争に本格介入することになり、それがゼレンスキー大統領やウクライナに有利になるが、ロシアは通常兵器で十分勝てるのでその必要はない上に、核を使用すれば、ロシアによる占領地は汚染されて使い物にならないので核使用をすることはありえないということらしい。

 しかし、ロシア軍はウクライナ軍に押し戻されているとの報道に見られるように通常兵器戦で劣勢であり、更に、広島・長崎で示されたように空中核爆発の場合には、放射能汚染は大きな問題にはならず、復興の妨げにはならなかったということもある。
 即ち、この記事の主張は根拠が乏しく、プーチンのこれまでの言動から核使用の可能性は十分考えられる。

 このスプートニク日本の記事の後半では、更に、ウクライナは西側から戦術核兵器を手に入れようとしており、ウクライナでの核使用はロシアの核ではなく、ウクライナによる戦術核の可能性があると主張している。これは、情報戦そのもので、仮に核使用された場合のためのロシア側のPR記事ともなっている。

 ロシア政府の在日関係者は、日本向けではなく、クレムリン向けに歴史の実態に従った提言、情報提供を行うことに注力したほうがロシアと世界のためになるのではないだろうか。