イスラムで自殺者が少ない訳2022年10月24日 06:34

 内藤正典・中田考「イスラムが効く!」(株)三島社によれば、イスラム圏で自殺者が少ないのは、「神様が認めてくれれば、人の言うことは気にしなくても良い」という考えが浸透しており、ストレスがかららしい。
 確かに、日本では、特に若者の間では、世間やマスコミ、ネットの意見が最重要で、それに左右されながら生きていく者が大部分だろう。
 過激派の自爆テロというのは、最近の情報過多社会で反体制派が目立つための一部の流行であり、イスラムにはそのような伝統はないらしい。日本の自殺者は年間数万人だが、自爆テロは数十件だろう。
 キリスト教もイスラム教も自殺は、神から与えられた命を自分で左右するのは、神を否定するものであるという、生命観に関する共通点がある。
 
 哲学者スピノザも、エチカの中で自分の考えというものは基本的に無いものであり、すべては外部からの影響で形作られるものである。即ち、第一原因は神であり、人間の自由意志などというものは幻想であると言っている。自殺を図ろうとする人間は、誰か他人の意見に左右されて、自らを殺そうとしているに過ぎないのである。
 汎神論を唱え、ユダヤ教会を破門されたスピノザではあるが、イスラムの教えと大きな共通点があるようだ。

 では、どのようにすれば人間は神に近づけるとスピノザは考えたのか。それは、勉学による真理の追究を重ねることで、直観力を養い、宇宙や事物を直観することに尽きるらしい。

 スピノザは死ぬまで哲学書を出し続けた。誰も殺さず、自殺もせず、レンズ磨きの内職で哲学を続けただけであるが、今も大きな影響を西欧社会に与え続けているのである。