核返還と核変換について2023年03月28日 10:06

 ロシアがベラルーシに戦術核兵器を配備するというニュースがあったので、ソ連崩壊時になぜ核配備されていたカザフスタンやベラルーシ、ウクライナがロシアに核返還を行ったのかを調べてみた。

 https://src-h.slav.hokudai.ac.jp/publictn/68/68-1.pdfによれば、ベラルーシやカザフスタンはリスボン条約に従い、すんなり核をロシアに返還し、NPTに加入したが、ウクライナだけは、核兵器の返還はかなり遅れた。これはウクライナ国内の一部にロシアを脅威を感じ、ロシアの核への対応が必要と考えた人々がいたためである。結局は全ての核をロシアに返還したが、それは、核を保有し続けるための経済的な負担にウクライナが耐えられなかったためであるとしている。確かに、核を保有するには相当の軍事費が必要になる。核爆弾は半減期14年で減少するプルトニウム241を含んでおり、原爆として機能するにはその性能の確認のための検査が必要であるうえ、事故による爆発防止やテロ対策など保持するだけでも多くの費用が掛かる。持っているだけでは意味はなく、敵を攻撃できる方法の開発にも膨大な費用が掛かることは、北朝鮮を見ていても理解できる。

 従って、核返還をすることで、NPTに参加し、核保有国からの保護を受けるほうが有利だと三国は考えたわけである。

 しかし、今回のロシアのウクライナ侵攻で事態は複雑に変化した。ベラルーシは、ロシアの核配備を受けることになった。これは、NPT条約だけでなく、リスボン条約違反でもある。ロシアの属国であるベラルーシは明確にロシアの戦争に協力するよう強制された状態になってしまった。

 従来、核の配備は曖昧であることが核抑止力になると言われてきたが、今や、プーチンの戦略は核抑止力云々のレベルではなくなった。明確な戦術核による脅しのレベルである。そういう意味で、沖縄返還時の核密約問題とはレベルが異なる。
 一時、日本もアメリカから核配備供与を受けるべきだという議論があったが、ベラルーシのように更に国際的な立ち位置は厳しくなるだろう。

 ところで、かくヘンカンと入力し変換したら核変換と表示されてしまった。
この意味は、原子核の変換である。一般には、放射性核種(所謂放射能を有する原子核)を放射能のない安定な核種に変換することを意味している。従って、これは核返還の議論とは全く逆方向の技術に関するものである。
 現在、実用化に向けて研究が進められている有力な手段としては、粒子加速器により発生させた陽子や中性子を放射性核種に照射する方法と特殊な原子炉による中性子照射によるものがある。前者は、現在の加速器では大量処分ができず、仮にできたとしても大量の電力が必要になる。後者では、その原子炉で発生する放射性物質以上に消滅する放射性物質を大きくしなければならないため、特殊な原子炉形態が必要となる。
 どちらも原理は確認されているが、現在の日本では、その経済性からまだ実用レベルには至っていない。しかし、すでに、人口放射性核種は、原発の使用済み燃料だけでなく、医療用放射性物質などの形でも発生している。これらをどうするか、地層処分が現在の唯一の解であるとして様々な議論を呼んでいるが、核変換の実用化も強く推進することが、原発への立場に関わらず環境負荷を軽減するうえで重要な技術開発項目である。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yokoyamashindo.asablo.jp/blog/2023/03/28/9572679/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。