長崎の女性被ばく者だけがしきい値が出ないワケ ― 2025年12月16日 09:56
被ばく者の発がん状況データは日米政府が出資した原爆影響研究所(RERF)が多くの研究報告書や調査データを公開してきた。その中にLSS-14と呼ばれる2014年の報告があり、比較的詳細なデータを提示してきた。
これを統計分析すると、長崎の女性では、どんなに低線量でも発がんリスクは.正である。広島の男性女性、長崎男性にはしきい値が現れtgているのに。(本ブログ2024年12月06日記事等)
ここではRERFのベースデータから非喫煙者に限定して固形がん発がん症例数と観察対象人年の総計をもとめ、発がん症例数を人年で割った値(発がんリスク比)を原爆の被ばく線量領域ごとに求めた。このデータベースでは、被ばく者の被ばく線量は結腸における線量で整理されている。
下記表で縦軸は各線量領域の最大値(最小値は0)、横軸は固形がん症例数を観察人数と観察年数の積で割った値の各都市ごと、性別ごとの値である。
結腸線量範囲 発がん率(solid/pyr)
(mGy) 広島_男性 長崎_男性 広島_女性 長崎_女性
0~5 0.0105 0.0105 0.0074 0.0071
0~20 0.0103 0.0105 0.0074 0.0072
0~40 0.0102 0.0103 0.0074 0.0073
0~60 0.0104 0.0104 0.0075 0.0074
0~80 0.0104 0.0103 0.0075 0.0074
0~100 0.0103 0.0102 0.0075 0.0074
0~125 0.0103 0.0102 0.0075 0.0074
0~150 0.0102 0.0102 0.0075 0.0074
0~175 0.0103 0.0101 0.0076 0.0074
0~200 0.0103 0.0100 0.0076 0.0075
0~250 0.0104 0.0100 0.0076 0.0075
0~300 0.0104 0.0099 0.0076 0.0075
0~500 0.0104 0.0102 0.0077 0.0076
0~750 0.0103 0.0100 0.0078 0.0077
0~1000 0.0103 0.0102 0.0078 0.0078
0~1250 0.0104 0.0104 0.0079 0.0078
0~1500 0.0104 0.0104 0.0079 0.0079
0~1750 0.0104 0.0106 0.0079 0.0079
0~2000 0.0104 0.0105 0.0079 0.0079
0~2500 0.0104 0.0106 0.0080 0.0079
0~3000 0.0105 0.0107 0.0080 0.0079
0~3400 0.0105 0.0107 0.0080 0.0079
本表から分かることは,両市の男性及び広島女性についてはほぼ被ばくしていない0~5mGyでの発がん率よりも小さい値となる線量領域があるが、長崎女性だけは全て0~5mGyでの発がん率よりも大きいことである。
即ち、低線量であるほど発がんリスクが小さくなっており、発がんにおける被ばく線量のしきい値がないということと整合している。
これらの要因により、国際放射線防護委員会の被ばく基準に関する各国政府への勧告としては、安全側にしきい値無し仮説(どんなに低線量でも発がんリスクがある)が採用され、福島事故での避難区域設定でも用いられた。
なぜこうなるかについてはいろいろな考え方があるが、以下の二つの要因が効いていると思う。
(1)広島と長崎の原爆の構造差
(2)男女の発がん臓器と原爆線源位置の関係
(1)については、長崎の原爆では、発がんの主要因と考えられる即発ガンマ線のエネルギー分布が高エネルギー側に偏っていることが特徴となっている。これはプルトニウム原爆のため、爆縮装置という熱膨張を防ぐ機構が劣化ウラン金属でできており、プルトニウムの爆発により発生する中性子がその劣化ウランと反応して大量のガンマ線が発生するためである。(RERFの線源評価資料DS-86、p.43)
(2)については、女性では乳がん比率が大きいと推定されるが、これが長崎女性のみ特異な結果になっている主要因と考えられる。
即ち、LSS-14ではデータベースの発がん発症数は各被ばく者の結腸線量ごとに整理分類されていることが一因となっている。
胸部と結腸部との距離は、男性においてがん発生例数で多いと考えられる前立腺や胃と結腸部の距離に比べ長い。高エネルギガンマ線ではガンマ線の減衰が大きいので(1)のような長崎型原爆では、被ばく線量の実効的な減衰比が広島型原爆の場合よりも大きくなると考えられる。このため、体内の透過距離が長い結腸で評価した場合、胸部の線量は結腸線量よりかなり大きな線量を浴びることになる。
原爆のガンマ線は上方から地上のヒトを照射するのである。高エネルギーガンマ線の場合には減衰比の小さい低エネルギーガンマ線よりもその差は大きい。広島女性に比べ長崎女性は見かけ上(結腸線量で)低線量であっても乳がんなどの固形がんがより多く発生することになる。
このような理由で長崎女性でのしきい値が生じにくくなったと考えられる。
これを統計分析すると、長崎の女性では、どんなに低線量でも発がんリスクは.正である。広島の男性女性、長崎男性にはしきい値が現れtgているのに。(本ブログ2024年12月06日記事等)
ここではRERFのベースデータから非喫煙者に限定して固形がん発がん症例数と観察対象人年の総計をもとめ、発がん症例数を人年で割った値(発がんリスク比)を原爆の被ばく線量領域ごとに求めた。このデータベースでは、被ばく者の被ばく線量は結腸における線量で整理されている。
下記表で縦軸は各線量領域の最大値(最小値は0)、横軸は固形がん症例数を観察人数と観察年数の積で割った値の各都市ごと、性別ごとの値である。
結腸線量範囲 発がん率(solid/pyr)
(mGy) 広島_男性 長崎_男性 広島_女性 長崎_女性
0~5 0.0105 0.0105 0.0074 0.0071
0~20 0.0103 0.0105 0.0074 0.0072
0~40 0.0102 0.0103 0.0074 0.0073
0~60 0.0104 0.0104 0.0075 0.0074
0~80 0.0104 0.0103 0.0075 0.0074
0~100 0.0103 0.0102 0.0075 0.0074
0~125 0.0103 0.0102 0.0075 0.0074
0~150 0.0102 0.0102 0.0075 0.0074
0~175 0.0103 0.0101 0.0076 0.0074
0~200 0.0103 0.0100 0.0076 0.0075
0~250 0.0104 0.0100 0.0076 0.0075
0~300 0.0104 0.0099 0.0076 0.0075
0~500 0.0104 0.0102 0.0077 0.0076
0~750 0.0103 0.0100 0.0078 0.0077
0~1000 0.0103 0.0102 0.0078 0.0078
0~1250 0.0104 0.0104 0.0079 0.0078
0~1500 0.0104 0.0104 0.0079 0.0079
0~1750 0.0104 0.0106 0.0079 0.0079
0~2000 0.0104 0.0105 0.0079 0.0079
0~2500 0.0104 0.0106 0.0080 0.0079
0~3000 0.0105 0.0107 0.0080 0.0079
0~3400 0.0105 0.0107 0.0080 0.0079
本表から分かることは,両市の男性及び広島女性についてはほぼ被ばくしていない0~5mGyでの発がん率よりも小さい値となる線量領域があるが、長崎女性だけは全て0~5mGyでの発がん率よりも大きいことである。
即ち、低線量であるほど発がんリスクが小さくなっており、発がんにおける被ばく線量のしきい値がないということと整合している。
これらの要因により、国際放射線防護委員会の被ばく基準に関する各国政府への勧告としては、安全側にしきい値無し仮説(どんなに低線量でも発がんリスクがある)が採用され、福島事故での避難区域設定でも用いられた。
なぜこうなるかについてはいろいろな考え方があるが、以下の二つの要因が効いていると思う。
(1)広島と長崎の原爆の構造差
(2)男女の発がん臓器と原爆線源位置の関係
(1)については、長崎の原爆では、発がんの主要因と考えられる即発ガンマ線のエネルギー分布が高エネルギー側に偏っていることが特徴となっている。これはプルトニウム原爆のため、爆縮装置という熱膨張を防ぐ機構が劣化ウラン金属でできており、プルトニウムの爆発により発生する中性子がその劣化ウランと反応して大量のガンマ線が発生するためである。(RERFの線源評価資料DS-86、p.43)
(2)については、女性では乳がん比率が大きいと推定されるが、これが長崎女性のみ特異な結果になっている主要因と考えられる。
即ち、LSS-14ではデータベースの発がん発症数は各被ばく者の結腸線量ごとに整理分類されていることが一因となっている。
胸部と結腸部との距離は、男性においてがん発生例数で多いと考えられる前立腺や胃と結腸部の距離に比べ長い。高エネルギガンマ線ではガンマ線の減衰が大きいので(1)のような長崎型原爆では、被ばく線量の実効的な減衰比が広島型原爆の場合よりも大きくなると考えられる。このため、体内の透過距離が長い結腸で評価した場合、胸部の線量は結腸線量よりかなり大きな線量を浴びることになる。
原爆のガンマ線は上方から地上のヒトを照射するのである。高エネルギーガンマ線の場合には減衰比の小さい低エネルギーガンマ線よりもその差は大きい。広島女性に比べ長崎女性は見かけ上(結腸線量で)低線量であっても乳がんなどの固形がんがより多く発生することになる。
このような理由で長崎女性でのしきい値が生じにくくなったと考えられる。
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