シンプソンのパラドックスとがんパラドックスの関係性2023年09月27日 09:21

統計論ではシンプソンのパラドックスというものがあるそうで、
治療法          方式A               方式B
効 果   なし   あり   あり割合   なし    あり   あり割合
女      3     37    0.925      1    19     0.950
男      8    12    0.600      12    28     0.700
合 計   11   49     0.817     13     47     0.783

の表で女性、男性とも方式Bが方式Aより優れているが
女性と男性の合計で見れば方式Aのほうが方式Bより優れているということになる。
出典)https://www.krsk-phs.com/entry/simpsonparadox

この解釈はいろいろあるそうだが、仮にY染色体上のDNAに治療Aの治療法が作用し、方式BがX染色体上のDNAに作用していると考えれば、Y染色体を男性より2倍持つ女性がより恩恵を受けるため、上記の結果になっても不思議ではない。

 特性の異なる女と男を合計すること自体が無意味なのである。

これと同じかどうかはわからないが、がんパラドックスというものもありうる。

これは、1ミリシーベルト以上でがん発生リスクがあるという法律の下、放射線を恐れながら、1000ミリシーベルト以上の放射線の被ばくでがん治療を受けるというパラドックスのことである。

このパラドックスの元は、国際放射線防護委員会(ICRP)の決めた放射線防護基準に各国が従っているためである。ICRPは広島・長崎の原爆生存者のがん発生率が、被ばく線量で300ミリシーベルト~4000ミリシーベルトの範囲で、1000ミリシーベルト当たり30%程度増加することを根拠に被ばくが数ミリシーベルトでもリスクがあるとして、1ミリシーベルトの基準を設定した。

しかし、原爆による放射線は爆発時間1ミリ秒以内で受ける放射線量である。

一方、がん治療では10時間程度(36000秒程度)で最大60000ミリシーベルトの放射線を照射する。即ち、時間当たりの線量率は、1.7ミリシーベルト/秒となる。広島・長崎被ばく者では最小でも時間当たりの線量率は、300000ミリシーベルト/秒である。

この時間当たりの線量率の差ががん発生を生じるかどうかの違いなのである。人類は太古から放射線を浴びてきたが、その結果、数ミリシーベルト/秒程度の線量率に対してはがん発生に対する免疫機能を持つようになった。しかし、原爆のような時間線量率が高い被ばくは人類の歴史にはなかったことである。したがって、300ミリシーベルト程度の被ばくでもがん発生を生じたのである。この時間線量率の両者の大きな差を無視して、ICRPは被ばく基準を原爆被ばく者のがん発生データを根拠として設定した。

これが、このパラドックスの原因である。

このICRP基準は必ずしも安全側ではない。時間線量率を無視しているがゆえに、近年増えている航空機利用での高空での被ばく、特に、太陽フレアの発生時の瞬間高エネルギX線被ばくによるがん発生を防ぐことができない。成田とニューヨークの往復飛行で被ばくする線量は平均0.2ミリシーベルトであったとしても、太陽フレア発生(これは太陽表面での異常核融合爆発に由来する)時には原爆と同様の瞬間的な高線量率被ばくを受ける。これが米国で報告されているCAの異常な乳がん発生率の増加の原因と考えられる。

出典)https://www.arpansa.gov.au/cancer-prevalence-among-flight-attendants-compared-general-population

2025年はこの太陽フレアの頻発期となっている。早めに基準の見直しをすべきであろう。

補足)がんが放射線治療で治る理由は、がん細胞が正常細胞より放射線に弱いためである。がん細胞はがん抑制遺伝子がなくなっている異常な細胞であるが、その結果、細胞の増殖周期が正常細胞より数ケタ大きい。即ち、細胞分裂の頻度が高い。細胞分裂時には核内のDNAが安定な2重らせん構造がほぐれる必要があるので、一重らせんになる。この一重らせん状態の時間が長いのでがん細胞は放射線により簡単に損傷を受け、がんが消滅することになる。一方、正常細胞はがん抑制遺伝子が機能するので、がん化が抑制される。この組み合わせにより、がん治療の適切な照射条件が決まる。

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