差別発言と「the」問題2021年02月15日 07:18

マーク・ピーターセンさんの「日本人の英語」に書かれていたと記憶するが、「the」には話者と読者が了解している場合の名詞に使われるので、無知の「the」というものがあるそうだ。宇宙人の襲撃のSF映画で、誤解してロシアからの攻撃だと思いこんだ米国人がthe Russians comeとか言ったそうだ。
冷戦時代の米国民でも差別意識なしに、the Russians と言ってしまうのだから、女性が鉄のカーテンの向こうの人々だと思って生きてきたお方がthe Femalesと言ってしまっても仕方がないかもしれない。

しかし、冷戦はとっくに終わったし、genderに関係なく共生する社会となっている。

日本人は特に同質化が進んだ民族なので、同質でない人々をこの無知のtheでグルーピングしないと不安になり、自分の存在意義がなくなると思いがちである。当事者にとっては不愉快なこともおおいであろう。このような例は山のようにある。

the 大阪のおばちゃん
the 迷惑老人
the 若者
the サラリーマン
the 政治家
the マスコミ

しかし、しかし、言葉というものはもともと事象をグルーピングすることで抽象化し、効率的に意識を具現化、伝達するものなのである。どうしてもtheでまとめたような言葉が必要になる。

ではどうするか。すべてはその単語ではなく、どのような文脈でその言葉が使われたかで判断せざるを得ない。そういう意味で私は文章となっていないスローガン、キーワードの羅列、最近ではツイッターでの短い発言などはまともに聞かないようにしている。マスコミやCMで使われる何とかが重要だとか、何とかが良いなどという話もそれだけではあまり意味がないものと思っている。