運とは結局統計分布で決まるものだった!2024年02月11日 20:32

 よく行く蕎麦屋では食券販売機でいろいろなメニューを選べるようになっている。最近、好みのメニューが売り切れになることが多かった。これまでは大体食べられたのに、最近はいつも売り切れになっている。運がないのかなあーなどと思っていた。

 しかし、今日の昼に同じ店に行ったら、運よくそのメニューはあったのである。これは運が良かったとその瞬間は感じた。

 しかし、私がそれを選んだ直後に、店の人が食券販売機を開けて、そのメニューを販売終了としたのである。

 今日はいつもよりも単に10分ほど早くその店に行ったのである。これは、単にその時間帯でちょうどそのメニューが売り切れるように食材を準備しているに過ぎないということである。

 即ち、私がそのメニューにありつけたかどうかは運で決まったということではなく、その時間帯に来客のピークがあり、そのピークの前に店に来れたかどうかという、単純な統計分布で決まる問題だったということになる。その来客数の時間変化分布の知識がなかっただけのことである。
 それを運がなかったという言い訳をして、自分自身を納得させていただけに過ぎない。

誤解を招く統計用語2024年01月06日 09:44

 95%信頼区間という用語がある。信頼性があるほど広がると勘違いする。この英語は95% confidence intervalである。直訳すれば、95%信頼間隔である。

 得られた結果の95%のこの間隔内に入るという意味である。即ち、信頼性がないほど広がることになる。全く逆である。

 まだ、直訳のほうが誤解を招かない。数学者の聞こえの良い4文字熟語愛好のためだろうか。なぜかこの用語となっている。

帰無仮説と対立仮説2024年01月05日 04:27

両方とも統計用語であるが、分かりにくい日本語訳である。

単純に偶然仮説と必然仮説と訳せば良かったのだ。

ある事象が基準から外れた場合、それが偶然だと思う事が帰無仮説(きむかせつ)である。
それが必然だと思う事が対立仮説である。

ここでポイントは偶然でなければ、必然なのだが、統計論では、必然という事は統計論の本質上使えないので仕方なく対立ーalternative-という用語を使ってしまったことである。alternativeにそれほど哲学的な意味は無いと思うが、なぜか学者はもっともらしい四文字熟語を使いたがるものである。

もう少し正確に言えば、観測結果が偶然に生じたと考える事が帰無仮説で、ほほ必然的に生じたと考えるのが対立仮説である。

そこで、どちらの仮説でも採用すれば、過誤ー真実から外れる事ーが発生する。 それぞれ第一の過誤(α)と第二の過誤(β)である。
ここは翻訳ができなかったようだ。統計論のテキストではギリシャ文字がそのまま書かれている。どちらを採用するにしても過誤は必ず発生する。

統計論では真実は分からないことになっている。
だからと言って、用語も分かりにくくする必然性は無い。

それでもいいと認める事を虚無仮説と名付けたい。


ところで、通常の統計処理では、データ数や得られた平均値、分散を用いた数値ー対象条件によりz値またはp値と呼ばれるーをまず計算する。次に、帰無仮説が正しいとして中心極限定理で想定される分布を設定し、この分布の端5パーセント以内にその計算値がある事を確認する事で、その結果は帰無仮説とは両立しない、即ち帰無仮説は棄却できると結論する。即ち、その結果が得られた事は必然性が有る、統計的に有意であるという手順を踏む。なぜこんな面倒な分かりにくく手順が標準になっているのか、偶然なのかもしれない。p値は現代統計論の祖フィッシャー先生も単なる目安だと話されていたようで、人によっては、意味はあまり無いーというくらいだ。

統計ソフトRのマニュアルと記載内容の関係整理2023年12月26日 04:23

 Rの説明マニュアルには日本語、英語の様々なものがあるが、統計処理法の詳細も含むRの全貌を記載したテキストで分かりやすいものは英語版も含め少ないようだ。

仕方ないので、自分で個々の説明書の特徴を整理してみた。

(1)Rで基礎から学ぶ統計学(ハード書籍、有料)、J.Schmuller,笠田実訳東京化学同人
  うまくまとめてあるRを使いつつ統計論の本質を理解させようとしている。曖昧な統計学の知識しかないRの初心者には最適だ。訳文も非常に分かりやすい。なお、細かいRパッケージの内容には踏み込んでないので、Rと統計論のマスター者向けではない。

(2)私たちのR
https://www.jaysong.net/RBook/
これは、統計関係以外の主にRでのデータの扱い方を詳論した分かりやすいテキストであり、Rでのデータ構造を詳しく論じている。そのため、全体が長いが、簡単な説明書よりは理解にかえって時間がかからない。パイプ演算子 (|>)という大量データ処理を簡単にできる演算子に触れているのもこの説明書だけのように思う。
統計関係の関数やパッケージが含まれていないので統計処理をすぐ始めたい人には辛抱が要求される。但し、急がば回れかもしれない。索引、検索機能、PDF版があれば使い勝手が良くなると思う。

(3)A introduction to R
https://cran.r-project.org/doc/manuals/R-intro.pdf
(4)R入門
https://cran.r-project.org/doc/contrib/manuals-jp/R-intro-170.jp.pdf

(4)は(3)の日本語訳でRの導入から、データ、Rの統計モデル、グラフィックスまで広範な説明が書かれている。索引もあるので使いやすい。ただ、データ処理関係は(2)の方が私には読みやすかった。
 統計パッケージの計算モデルも分かりやすく説明しているので、Rを用いた解析結果を外部に説明する際に最適である。非線形回帰分析まで含んでいる。

(5)R 基本統計関数マニュアル
https://cran.r-project.org/doc/contrib/manuals-jp/Mase-Rstatman.pdf
間瀬茂氏によるRの説明書で単にR関数の使用マニュアルというよりも様々な統計に関わるRパッケージほぼ全体を詳述しており、400ページの大作だが、索引も充実しており、実用的でもある。特に非線形解析パッケージを日本語で詳述しているのはここだけかもしれない。中級者向け以上を対象にしている実用書である。

(6)Rクックブック第2版(オイラリージャパン、有料)
(7)R cookbook 2nd edition
https://rc2e.com/

(6)は(7)の邦訳版、ネット書籍pdf版あり。
Rを一通り理解した人向け、目的毎、関数ごとのR利用法を細かく記載しているので、実際にRを使用している人が、個別の問題を解決する際に利用すると非常に便利。即ち、目前の細かい問題ごとに解決法を教えてくれる。データ処理、統計処理の諸問題に対するRを使った料理レシピで、数千円払う価値はある。


(7)回帰分析関係パッケージ説明書各種
 Rはボランティアによる共同開発プロジェクトのようなものであり、プラットフォーム、統計関係各種パッケージともに公開、無料で、かつ、進化を続けている。
 最近、Rのgnm(general non-linear model)パッケージを見よう見まねで使っていたが、統計論自体深く理解しているわけではないので、開発者のパッケージ説明書を読んでも英文の理解不足もあり簡単には頭に入って来ないことが多い。そこで、ベースとなっているパッケージのnls(non-linear system?)やglm(general linear model),lm(linear model)の説明書も読んで内容把握に努めているが、細部はよくわからないことが多い。 
 ただ、Rではパッケージのソースも公開なので、いざとなったら、そのソース情報を公開、引用することで、データ解析の妥当性を説得できるかもしれない。

広島・長崎の被ばく者データを見直す必要性2023年12月23日 05:09

放射線に絡む全ての社会現象は、国際放射線防護委員会(ICRP)の被ばく防護に関わる勧告・指針に依拠した法律・基準に大きく影響されている。今回の福島事故処理水放出騒ぎも同じである。

この大元であるICRP勧告自体が間違っている可能性が大きい。その被ばく基準の科学的根拠は、広島・長崎の被ばく生存者のがん発生調査に大きく依存している。しかし、広島と長崎では、放射線量とがん発生率の関係が異なっている。それが単に定量的に違うだけならまだよいが、定性的にも違う。即ち、広島ではある線量範囲でがん発生率が減少するのに、長崎では増加しているのである。その時の比較対象者は、原爆投下時に各市の中心から20キロ以上離れた市外位置住民であり、被ばく線量は0と評価されている。

なぜこのようなことが生じるのか、原因は二つ考えられる。

一つは、調査データに不整合がある場合である。例えば、市外位置住民のがん発生データの見積もり方と被ばく住民ではがん発生数の評価方法が両市の間で異なっていた事が考えられる。
がん発生数と言っても単純では無い。そのがんが、同一人の別の場所から転移したものか、無関係に次のがんが発生したものかは、当時の医学レベルでは医師により判断が異なっていたことは大いにありうる。
被ばくゼロでのがん発生数が数倍異なれば、被ばく効果は逆転しうるのである。なぜなら、被ばく以外の効果が勝るからである。その多くは、喫煙によるもので当時は多くの日本人が、女性も含め喫煙習慣があった。がんが喫煙によるものか、被ばくによるものか、新陳代謝によるものかは今でも分からない。

更に両市で異なるのは、原爆のタイプである。広島は濃縮ウラン型で、長崎広島はプルトニウム型である。このため、原爆の構造が大きく異なる。ガンマ線の被ばくが線量の多くを占めるとはいえ、中性子の寄与がどのていどだったのか、地形の影響がどうなのか、今でも議論のあるところである。悲しいことに、軍事機密ということで、その評価の詳細は、米国から日本にはかいじされていない。当時はソ連との冷戦が予想されており、トルーマン大統領が、簡単に大量生産できると思ったプルトニウム型の実験を長崎ですかさずやりたがってのは理解できなくも無い。
しかし、線量評価の詳細、特に、ファットマン原爆の構造も含めて日本側に開示すべきだろう。今も、肝心の放射線線源データは簡単な1ページの表のみであり、担当は米国人に限られている。

もう一つの要因としては、被ばくデータやがん発生データが正しいとしても、その統計処理法が、間違っている場合である。

例えば、喫煙効果と放射線効果は個別のものとして評価されているいる。タバコには、燐酸肥料を通して花崗岩にあるポロニウム210という放射性物質が含まれている。この喫煙にがん発生は、喫煙効果なのか、被ばく効果なのか判然とはしない。仮に、両市の住民のタバコ原料に違いがあれば、原爆の被ばく影響と喫煙効果を混同した評価になっていても不思議ではない。

いずれにせよこのような疑問点だらけのICRP基準でマスコミや政府が福島事故や原発を議論している事態を見直すことから始めなければ日本に将来は無い。日本は科学技術しか頼れない資源小国なのだから。

Rにおける一部偏回帰係数の固定方法2023年12月08日 04:58

https://www.pu-hiroshima.ac.jp/p/ttetsuji/R/[57]fixed-param-coxph.html
によれば、重回帰解析で、一部の偏回帰係数を固定して解析するにはoffset項として設定すればよいということになっている。

 一般化非線形モデルgnmパッケージを使う場合はどうなるのだろうかーと長い間検討中だったが、gnmでのポアソン回帰解析で用いられる被ばく時間項のoffset項の中に、偏回帰係数*説明変数の形で追加すればよいことが分かった。それも複数の偏回帰係数を固定したい場合にはさらに加えればよいだけである。

 この手法の妥当性は、有料ソフトであるEPICUREのAMFITコードでの偏回帰係数固定による結果とほぼ一致していることで示すことができた。

 確かに、ポアソン回帰で目標変数の修正のためにoffset項が使われるのだから、一部説明変数の寄与分を目標変数から削除するにはoffset項に取り入れればよいはずである。今回それが単にoffset項への偏回帰係数とその対応説明変数の積を追加していけばよいという簡単な補正で実現できることが分かった。

がん治療と原爆、宇宙線被ばくの関係2023年11月23日 07:16

 前立腺の放射線治療では最大60シーベルト受ける。
 広島原爆の生存者の被ばく量は最大4シーベルトで、放射線影響で固形がんが数倍増加した。

 では、前立腺がんの放射線治療でがんが治るのはなぜか?
一見、大きながんパラドックスがあるように見える。

 しかし、免疫機能は「細胞内の化学変化過程で十分機能するには一定の時間が必要である」と考えれば謎は解ける。
 原爆は瞬間(1ミリ秒以下)での大量被ばくだが
 一方、放射線治療の被ばく時間は数時間レベルである。
原爆のような強烈な放射線発生装置はいまだにないのである。

 両者の単位時間当たりの被ばく量にはおよそ6桁の差がある。

 放射線治療では、がん周辺の正常細胞部では免疫機能が残っているのでがん化しにくい。しかし、がん細胞部ではがん抑制遺伝子が失われている上に、増殖のための細胞分裂が正常細胞に比べけた違いに活発になっている。細胞分裂が活発だと、DNAがほどけて一本鎖になる不安定な期間が長くなり、放射線被ばくで損傷するため、がん細胞が優先的に死滅する。

 原爆では、瞬間被ばくであり、過去人類が経験した事がなかったため正常細胞であってもがん抑制遺伝子などによる免疫機能が時間的に間に合わず、がん細胞に変化したまま残ったのである。

 ICRPはこの原爆被ばく生存者のがん発生実績調査を主たる根拠として、年間被ばく許容限度を決めた。
 これは、1ミリ秒と1年を同じ時間だと考えているに等しい。マウスなどで急速照射をしていると称してはいるが、原爆の瞬間被ばくを模擬しているとは言い難い。

 そこで気になるのが、最近増えているCAにおける乳がんなどの発生数増加である。その原因は、従来、宇宙線の恒常的な被ばくと考えられているようだが、そうではないはずである。それは、年間数回発生する太陽フレア(太陽表面黒点での核融合反応の異常増大)発生における初期のインプレシブ相におけるX線の急激な増加による瞬間被ばくの影響と考えられる。これは成層圏における太陽の核融合反応による水爆被ばくに相当する。

https://iopscience.iop.org/article/10.3847/0004-637X/818/1/56
のPDF図2、図3)

黒点の大きさは地球の数倍になるので、この瞬間的に発生する大量の宇宙線はほぼ平行ビームとして飛行機の搭乗者を襲う。そして、運悪くこの瞬間に飛行機に搭乗していたCAの乳房(旅客も同じだが)はがん細胞を生じることになる。

 このような宇宙線はジェット機や宇宙ロケット以前には、地上に生活して、大気の宇宙線遮へい(約3桁下になる)の恩恵を受けていた人類は受けた経験がない。

 原爆被ばく者のがん発生データでも女性の固形がん発生率は男性より2倍程度多い。これはパイロットよりも特にCAにがん発生が多いことと符合している。

 即ち、ICRPは年間被ばく量や3か月単位被ばく量で規制しているが、このような瞬間被ばくは規制対象となっていない。これが福島の規制(1~20ミリシーベルト/年)と放射線がん治療(最大60シーベルト)のレベルがけた違いでになっているというがんパラドックスを含むすべての放射線規制問題の不整合の原因である。

 なお、上記仮説における瞬間被ばくにおける男女差について、理由づけるとすれば、人類が発生して以来、200万年ほど、男性は狩猟で大量の太陽光線を浴びる傾向があったが、女性は森の中で子育てに時間を掛けていたために太陽フレアに対する免疫性がそれほど獲得できなかったという状況も考えられる。

基準値のからくりとICRP(国際放射線防護委員会)基準2023年10月19日 11:45

 2014年に出版された「基準値のからくり」村上道夫他著、講談社ブルーバックスには福島事故後の空間線量に関する避難区域区分(20mSv/年以下)、目標除染線量(1mSv/年以下)に関し、基となったICRP(国際放射線防護委員会)勧告の基準の変遷に関する詳細な経緯が記されていて興味深い。

同書によれば、1mSv/年はICRP勧告による公衆被ばくの最大許容線量、20mSv/年は職業被ばくの最大許容線量をもとに日本政府か定めたものである。

簡単にICRP勧告の基準の変遷を整理すると以下のようになる。

1.ICRP1950年勧告:職業被ばくは最大許容線量150mSv/年
 
 この当時はICRPは、約3mSv/週以下では放射線影響がない、即ちこの付近に閾値があると考えていた。3mSv/週は150mSv/年に相当するので、現在の公衆被ばく制限の150倍まで許容していたことになる。


2.ICRP1954年勧告:公衆被ばく最大許容線量は職業被ばくの1/10

 なぜ1/10としたのか明確な根拠はない。


3.ICRP1958年勧告:職業被ばくは18歳以上50mSv/年(生殖腺、造血臓器、水晶体平均値)

 ICRPはLNT仮説の考え方を採用し、白血病の誘発には閾値があると仮定する考え方もあるが、最も控えめな方法としては、閾値も回復も仮定しないとする即ち、線量と発がんリスクは比例すると考える仮説による勧告を行うようになった。


4.ICRP1977年勧告:職業被ばく線量限度は50mSv/年
             公衆被ばく線量限度は1mSv/年

これらの根拠は以下のとおりである。

ICRPは1977年に、1958年勧告で決められた職業被曝に関する最大許容線量50mSv/年について、発がんによる死亡リスクに基づく判断を示した。このときから最大許容線量に代わって「線量当量限度」という言葉が用いられるようになり、1990年からは「線量限度」と呼ぶようになった。
 受け入れられるリスクのレベルは、ほかの職業での労働にともなう年問死亡率と比較して決められた。米国で安全水準が高い職業では、職業上の危険による平均年間死亡率が「1万人当たり1人(10の-4乗)」を超えない」と推定され、これが受け入れられるリスクのレベルとされた。
 次に、職業被曝において50mSv/年という実効線量限度を設定した場合の、発がんによる死亡リスクが計算された。「実効線量」とは全身の平均的な被曝線量のことであり、すべての組織の被曝による総リスクが評価できる指標である。
 ここでは線量限度を50mSv/年と設定すると、すべての作業者の線量の平均値はその10分の1の5mSv/年になると仮定している。当時は1000mSvの放射線被曝をしたときの発がん死亡リスクは1%(100人に1人)と考えられていた。これらの数字から、線量限度50mSv/年の場合の発がんによる死亡リスクは、1万人当たり0.5人となる。
 ICRPは安全な水準の職業での年間死亡率(1万人当たり1人)よりもこの数字は小さいので、線量限度50mSv/年は受け入れられるという判断した。
 
 1977年勧告では、公衆被曝において受け入れられるリスクについ
ても言及された。公衆の受け入れるリスクは職業上のリスクよりも1哘低いなどを理由として、公衆被曝において受け入れられる死亡リスクのレベルは、1年間で10万人に1人から100万人に1人の範囲であろうとされた。
 10万人に1人という年間死亡リスクは、当時の発がんリスク(1000mSv当たり1%)にもとづくと、実効線量としては1mSv/年に相当する。集団の平均線量を1mSv/年より低くするには、線量限度を5mSv/年とするのが妥当として、公衆被曝において受け入れられるリスクとした。
 

5.ICRP1978年パリ声明:公衆被曝の線量限度は1mSv/年

 1977年の公衆被曝の線量限度5mSv/年は、1mSv/年に改められた。この変更の理由は明らかではない。



6.ICRP1990年勧告:職業被ばく線量限度は20mSv/年

 1999年の勧告では、1000mSv当たり発がん死亡率リスクは4%に見直され、また、英国学士院の死亡率評価をもとに、「年間死亡リスク1000人当たり1人は、まったく受け入れられないとはいえない」という考え方をもとに、発がんについての死亡リスクを計算したところ年間死亡リスクが65歳まで「1000人当たり1人」は、20mSv/年以下となったことから、職業被曝の実効線量限度は20mSv/年へと変更された。これが、日本政府が定めた避難の基準値20mSv/年のルーツとなっている。


7.ICRP1990年勧告:1885年公衆被ばく線量限度:1mSv/年の確認

5mSv/年浴び続けても寿命短縮効果は非常に小さいが、ラドンを除いた場合の住居による変動は1mSv/年程度はあるので、後者の変動は受け入れられるとして、1mSv/年とした。



 以上のように、許容線量をできるだけ小さくするようにICRPの基準は変動してきており、それは1950年勧告から150分の1になっているが、その根拠は常に曖昧なままである。

シンプソンのパラドックスとがんパラドックスの関係性2023年09月27日 09:21

統計論ではシンプソンのパラドックスというものがあるそうで、
治療法          方式A               方式B
効 果   なし   あり   あり割合   なし    あり   あり割合
女      3     37    0.925      1    19     0.950
男      8    12    0.600      12    28     0.700
合 計   11   49     0.817     13     47     0.783

の表で女性、男性とも方式Bが方式Aより優れているが
女性と男性の合計で見れば方式Aのほうが方式Bより優れているということになる。
出典)https://www.krsk-phs.com/entry/simpsonparadox

この解釈はいろいろあるそうだが、仮にY染色体上のDNAに治療Aの治療法が作用し、方式BがX染色体上のDNAに作用していると考えれば、Y染色体を男性より2倍持つ女性がより恩恵を受けるため、上記の結果になっても不思議ではない。

 特性の異なる女と男を合計すること自体が無意味なのである。

これと同じかどうかはわからないが、がんパラドックスというものもありうる。

これは、1ミリシーベルト以上でがん発生リスクがあるという法律の下、放射線を恐れながら、1000ミリシーベルト以上の放射線の被ばくでがん治療を受けるというパラドックスのことである。

このパラドックスの元は、国際放射線防護委員会(ICRP)の決めた放射線防護基準に各国が従っているためである。ICRPは広島・長崎の原爆生存者のがん発生率が、被ばく線量で300ミリシーベルト~4000ミリシーベルトの範囲で、1000ミリシーベルト当たり30%程度増加することを根拠に被ばくが数ミリシーベルトでもリスクがあるとして、1ミリシーベルトの基準を設定した。

しかし、原爆による放射線は爆発時間1ミリ秒以内で受ける放射線量である。

一方、がん治療では10時間程度(36000秒程度)で最大60000ミリシーベルトの放射線を照射する。即ち、時間当たりの線量率は、1.7ミリシーベルト/秒となる。広島・長崎被ばく者では最小でも時間当たりの線量率は、300000ミリシーベルト/秒である。

この時間当たりの線量率の差ががん発生を生じるかどうかの違いなのである。人類は太古から放射線を浴びてきたが、その結果、数ミリシーベルト/秒程度の線量率に対してはがん発生に対する免疫機能を持つようになった。しかし、原爆のような時間線量率が高い被ばくは人類の歴史にはなかったことである。したがって、300ミリシーベルト程度の被ばくでもがん発生を生じたのである。この時間線量率の両者の大きな差を無視して、ICRPは被ばく基準を原爆被ばく者のがん発生データを根拠として設定した。

これが、このパラドックスの原因である。

このICRP基準は必ずしも安全側ではない。時間線量率を無視しているがゆえに、近年増えている航空機利用での高空での被ばく、特に、太陽フレアの発生時の瞬間高エネルギX線被ばくによるがん発生を防ぐことができない。成田とニューヨークの往復飛行で被ばくする線量は平均0.2ミリシーベルトであったとしても、太陽フレア発生(これは太陽表面での異常核融合爆発に由来する)時には原爆と同様の瞬間的な高線量率被ばくを受ける。これが米国で報告されているCAの異常な乳がん発生率の増加の原因と考えられる。

出典)https://www.arpansa.gov.au/cancer-prevalence-among-flight-attendants-compared-general-population

2025年はこの太陽フレアの頻発期となっている。早めに基準の見直しをすべきであろう。

補足)がんが放射線治療で治る理由は、がん細胞が正常細胞より放射線に弱いためである。がん細胞はがん抑制遺伝子がなくなっている異常な細胞であるが、その結果、細胞の増殖周期が正常細胞より数ケタ大きい。即ち、細胞分裂の頻度が高い。細胞分裂時には核内のDNAが安定な2重らせん構造がほぐれる必要があるので、一重らせんになる。この一重らせん状態の時間が長いのでがん細胞は放射線により簡単に損傷を受け、がんが消滅することになる。一方、正常細胞はがん抑制遺伝子が機能するので、がん化が抑制される。この組み合わせにより、がん治療の適切な照射条件が決まる。

CAの乳がん発生と広島・長崎被ばく者の固形がん発生データとの相関関係2023年07月07日 09:56

 米国のCAにおけるがん発生率が一般人より1.5倍大きいとの調査報告がある。(6月11日付ブログ)

https://www.arpansa.gov.au/cancer-prevalence-among-flight-attendants-compared-general-population

 一方、広島・長崎被ばく者の固形がん発生率の女性/男性比が1.8倍であるとの研究結果が広島の放射線影響研究所(RERF)から出されている。

https://bioone.org/journals/radiation-research/volume-187/issue-5/RR14492.1/Solid-Cancer-Incidence-among-the-Life-Span-Study-of-Atomic/10.1667/RR14492.1.full
(Table5)

しかもこの女性/男性比は被ばく時の年齢が10歳上がるにつれ約20%ずつ低下するとのことである。

これらの検討結果を説明できる仮説として、以下を提示したい。

それは、両方とも瞬時被ばくによる乳がんの発生が大きく寄与しているという点である。

原爆は言うまでもなく瞬時(爆発時間は約1ミリ秒)被ばくである。黒い雨による被ばくは被ばく量に殆ど影響しないと報告されている。
一方、CAの高空での被ばくで問題になるのは、年数回発生する太陽フレアによる被ばくである。これも太陽表面での異常な核融合爆発による瞬間的な被ばくである。

RERFでは、がん発生部位まで含めた詳細な調査を進めているようだが、被ばく女性が乳がん発症率が多いのは把握されているようだ。

いずれも瞬時被ばくによるがん発生であり、長期被ばくによるものではない。
現在のICRPやIAEA、各国の被ばく基準が、瞬時被ばくと年間被ばくを区別しないで設定していることに福島汚染水放出問題の根本的な原因があるのである。
 即ち、長期被ばくでは人体のがん免疫機能により問題がない被ばく線量であっても、瞬時被ばくでは同じ被ばく線量でもがんの原因になる可能性が出てくるのである。

 コロナウイルスも高濃度で大量のウイルスに暴露されれば罹患するが、同じ量を一年に亘り低濃度で暴露されても罹患しないのと似ているということである。これを混同して合計量だけで基準を決めているのが世界的な統一基準になってICRP基準なのである。