甲子園のカメラマン席を無くせ2024年03月27日 23:38

昨日も甲子園でカメラマン席に選手が飛び込んだ。

ちょっと考えれば、あのカメラマン席が如何に危険か分かりそうなものである。ファールを追っていたら、膝の高さの壁があり、その向こうは1メートル以上の深い穴である。

このようなこうぞうは、甲子園以外では一箇所あるかどうかである。大リーグでも見たことは無い。予選の行われる地方の球場にはほぼ無いだろう。

選手は甲子園で初めてこの構造に出くわし、怪我のリスクを追って、カメラマン席に突っ込んでいく。

良い絵と選手の健康のどちらが優先されるのか、高野連の御偉方は分からないのだろうか。

もっとも、某マスコミが主催者に名を連ねているのでは、選手のリスクという優先順位より、根性論が大切にされるのかも知れない。

怪我人が出る前にあの様な危険な構造は潰すべきだ。

予選で慣れている、ダッグアウトとは異なるのである。

Tc-99はどこに消えたのか?2024年03月18日 20:09

 SPECT検査で使用したモリブデン‐99(Mo-99)の娘のテクネチウム-99m(Tc-99m)はガンマ線を出して孫のテクネチウム‐99(Tc-99)に世代交代をしたはずである。しかし、この孫核種はなかなか曾孫核種(ルテニウム-99(Ru-99)に変わらない。変わってくれれば安定なので放射線は出さない。しかし、孫核種のTc-99は平均世代交代(物理用語では半減期ー別に減るわけではなく、別の核種に変換されるだけである。)に22万年もかかる。そのため、世代交代時に放出されるベータ線やガンマ線がなかなか見つからないだけの話である。即ち、半減期が長いということは放射線を出す確率も低いわけだから、実は影響力は小さいということなのである。
 しかし、マスコミは、半減期が長いと、いつまでも無くならないので問題が大きいといういい方になる。それならば、安定核種はいつまでたっても無くならないのだから、放射性物質よりも一番問題が大きいということになる。
 どちらが正しい認識なのか、常識があれば理解はできるだろう。
実は水素の原子核(陽子)ですら、安定ではなく、わずかながら放射線を放出して崩壊する。長半減期が危険だというマスコミの言い方を真似れば、水素こそが最も危険な放射性物質ということになる。陽子は半減期10の30乗年で中間子と陽電子に崩壊することが分かっている。陽電子は電子と反応し、ガンマ線を発生する。即ち、普通の水から勝手にガンマ線が出ているのである。

 ところで、SPECT検査を受けた数千万人の患者、元患者から放出されているTc-99はなぜ、見つからないのか。それは、その崩壊で放出されるガンマ線のエネルギーが低いので、地中や宇宙から放出される放射線(主としてガンマ線)がTc-99のガンマ線エネルギーよりも二けた程度大きいため、環境ガンマ線の減速による低エネルギ―ガンマ線の雑音(バックグラウンドとも称する)に紛れて、検出しにくいだけなのである。
 検出器精度が良ければ、Tc-99ガンマ線は日本中、特に病院や患者の下水から大量に発見されるはずである。しかし、それは、他の放射線の影響に隠れていてわからない。即ち、影響がないということになる。

 地中処分される核のゴミと言われる廃棄物も長期的には現在の病院などから放出されているTc-99と同様の長寿命放射性核種だけになる。
世界には。日本より放射線のバックグラウンドが10倍以上高い地域がある。例えば、インド南西部などである。その地域のがん発生率は日本よりも低いことが報告されている。この事実を考慮すれば、放射性物質が、長寿命だから危険だというマスコミの論理は間違いだということにきずくことができるだろう。

モリブデン‐99の運命の分かれ目2024年03月15日 05:09

モリブデンという元素がある。天然のモリブデンは大部分がモリブデン‐98という陽子と中性子の合計が98個からなる原子核でできている。この数字が異なる原子核のことをその元素の同位体と称している。例えばモリブデン‐97とモリブデン‐98はモリブデン(Mo)の同位体である。

モリブデン‐99は放射線を発して崩壊するので、現在、地球上では天然には存在せず、ウランの核分裂の際に生成される。このため、使用済み核燃料から分離抽出される。

 このモリブデン‐99(Mo-99と略記)は半減期66時間で崩壊し、テクネチウム-99m(Tc-99m)というテクネチウム同位体になる。これがガンマ線を放出して半減期6時間のテクネチウム-99(Tc-99)に変わる。
 モリブデンとテクネチウムは化学特性の異なる金属である。また、99mと99の差はガンマ線が放出できるだけの内部エネルギーを有していることである。

 テクネチウム-99mは決まったエネルギーのガンマ線のみを発生するので、がんなどの検査における医療診断で最もよく使われて、SPECT検査と略称されている。

テクネチウム-99は、更に半減期21万年で電子線を放出し、ルテニウム-99(Ru-99)という安定同位体になる。

纏めると

 U-235(核分裂生成物の2.8%)→Mo-99(半減期66時間)→Tc-99m(半減期6時間、SPECT検査に利用)→Tc-99(半減期21万年)→Ru-99安定

ということになる。

この崩壊系列は、医療用のSPECT検査に利用されようがされまいが、物理現象なので同じことになるが、実用上はヒトの社会で差別待遇を受ける運命にある。

 オランダの同位体生産用原子炉の核燃料内で生成し、たまたま分離されて、医療用に利用されたモリブデン-99は人々から歓迎される貴重品として飛行機で運ばれ、日本で(又は世界各国で)がん検査などのために患者に注入される。その患者からはガンマ線が発生するが、1日程度でほとんどがテクネチウム-99となる。半減期21万年なので医療の世界では一応安全なものとして、患者は退院し、尿から環境に広がる運命となる。

 一方、核燃料内に残ったモリブデン-99は同様に数日以内にほとんどがテクネチウム-99になるが、これは使用済み燃料廃棄物として処分の対象となり、核のゴミとして人々から忌み嫌われる運命となる。日本では地層処分され、環境からは隔離されることになる。

 このヒトの都合で偶然、異なる運命を持つことになるモリブデン‐99はどちらが幸せなのだろうか。一見がん治療に役に立つとして歓迎されるが、実態としては現時点で環境を汚染している可能性のあるモリブデン‐99があり、一方、核のゴミとしてがんの原因と恐れられるが、環境に漏洩する可能性は数万年後と言われるモリブデン‐99もある。これが現代の原子力利用の現実ということになる。

環境への金属元素の放出で問題になるのは、生態系内での特定生物への蓄積の問題なので、医龍業界関係者はテクネチウムの医療機関外での分散動向を生態系での挙動も含め調査、公表すべきである。

誤解を招く放射能用語2024年01月31日 04:48

 基本的な用語が誤解を招くことは多い。
 放射能関係では、よく言われる放射線と放射能の使用時の混乱があるが、それは専門学者の責任でもある。

 放射線は正しくは電離放射線であり、物質を電離できるだけの高エネルギーを有する放射線である。
 一方、放射能は、放射線を発生できる能力をいうが、転じてその能力を有する物質も放射能と言ってしまう。これは正しくは放射性物質である。
 従って、放射性物質と放射能(放射能力)を混同しないで使用することが重要である。

 更に、半減期なる用語がある。これもかなり誤解を招く。放射性物質が半減するまでの期間なのだが、この減という漢字が間違いともいえる。
 減ったりはしない。別の物質に変換されるだけなのである。従って、半減期は「半変期」という用語の方が誤解を招かない。

 セシウム-137の「半変期」は30年である。30年で半分がバリウム-137に変換されるだけなのである。

 地球の年齢は、主にマントルに含まれるウラン-238(半変期45億年)と崩壊(実際には変換)してできる鉛-206(安定核種)の比率から推定できる。
 即ち、地球が出来たときから、ウラン-238(陽子数と中性子数の合計が238のウラン)は崩壊していき、α線とβ線を出しながら鉛-206(陽子数と中性子数の合計が206の鉛)に最終的に変換される。
 鉛-206への変換割合が時間により決まっているからこそ、逆に地球の年齢が46億年と推定できるのである。最初に100個のウラン-238があり、その約半数、50個が鉛-206になっていれば、46億年経過したことになる。(半減期45億年と46億年の差は丸め誤差である。)

 このように地球上の生命体は大地からも多くの放射線を浴びながら生存してきた。これは年間最大でも数百ミリシーベルトでの慢性的な被ばくである。
 しかし、20世紀に入り、ヒトは文明の進化の結果、二つの特殊な放射線を浴びることとなった。一つは、原爆による瞬間被ばくであり、もう一つは航空機利用による太陽フレア発生時の高空での瞬間被ばくである。これら二つの被ばくにより統計的に有意ながん発生の増加が報告されている。

 今年から太陽フレアの活動期に入るそうである。航空機利用は必要最小限にしたほうが良いかもしれない。

太陽フレアの本当の怖さ(2)2024年01月11日 20:54

昨年8月23日の時点では、太陽フレアの認識は以下の*****以下
に囲まれた内容だった。これは2025年における航空機利用への警告である。

しかし、これはまだ甘かった。
下のリンクのyahooニュースによれば今年2024年においても太陽フレアの発生回数は増加するとのことだ。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6487698

空気層による減衰がない高空では地上の3ケタX線強度が増大するが、下記のように瞬間被ばくで防ぎようがない。また、人類が受けたことがない被ばく形態で、免疫もないので発がん性が疑われる。

しばらく、航空機の利用は考え直したほうが良いだろう。


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江戸川区のサイト
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e007/bosaianzen/bosai/oshirase/taiyou-furea.html
によれば、地球への影響は、

携帯電話やテレビなどの放送が視聴不可
カーナビゲーションシステムの機能不全
電力設備で誤作動が起き、広域停電の発生
等とされている。

 しかし、図をよく見れば、太陽フレア発生後8分後にX線や電磁波が最初に地球に到達することが分かる。これはインパルシブ相と呼ばれ、光と同じ速度で到達するので、事前の予測ができなければ、その被ばくは防ぎようがない。

 現在、宇宙天気予報などと騒がれてはいるが、太陽フレアの発生頻度が11年周期であることなどが分かっているだけで、正確な発生日時が予測できないのは台風の発生日時が事前よそくできないのと同じである。即ち、現在の宇宙天気予報では、太陽フレアを地球で観測した後の放射線による影響の身を対象としてその影響が予報できるだけである。

 (この図の放射線は、陽子や中性子などの素粒子、プラズマは荷電粒子や電子と称している。これらは、電磁波よりも遅れて地球に到達する。即ちX線や電磁波は光の速度で到達するので、その発生は、発生日時の正確な事前予測ができなければ、X線の被ばくは防ぐことが不可能である。)

 特に上空にいるヒトは、地球大気による遮へい効果の恩恵を受けられないので、X線をもろに被ばくすることになる。

 天文学事典 図8-17によれば、このX線は硬X線(高エネルギーX線)なので、上空のヒト(飛行中の旅行者、パイロット、CA等)はかなりの被ばくを受ける。

 パイロットは太陽フレア発生時に飛行していたことが分かると、所謂勤務調整を受けるので、年間平均被ばく量はそれほど増加しない。問題は頻回旅行者やCAである。米国ではCAの乳がん発生率が一般人の1.5倍であることが報告されている。

https://www.arpansa.gov.au/cancer-prevalence-among-flight-attendants-compared-general-population

 このインパルシブ相は太陽における核融合爆発から発生する高エネルギーX線被ばくであり、広島・長崎の原爆爆発によるガンマ線被ばくと同じものである。(ガンマ線は核分裂生成物から発生する高エネルギー電磁波、X線も高エネルギー電磁波であることに留意)

 2025年は平均年数回発生する太陽フレアの頻度増加の次回ピーク年に当たる。広島・長崎の被ばく者のがん発生増加が観察されているように、今後も頻回飛行機旅行者やCAにおけるがん発生の増加がみられるだろう。

 インド南西部やブラジルの一部などの地上での「年間」線量は、事故後の福島東部の「年間」線量よりも一桁高いが、がん発生率は世界平均を下回っている。
 一方、「単位時間線量率」(1秒あたりの被ばく線量率)は、太陽フレア発生時にCAが受ける「単位時間線量率」の約5桁程度下であると見積もれる。広島・長崎の被ばく者が受けた「最大単位時間線量率」もCAが太陽フレア発生直後に受ける「最大単位時間線量率」と同程度であると考えられる。

 アルコールの一気飲みの害と年間アルコール摂取の害(量に依っては益)を一緒にすることは大きな誤解を生むが、どのマスコミも政府(放射線安全規制検討会等)も国際放射線防護委員会(ICRP)もきちんとその差を認識していない。これは免疫学の知識の不足によるものではないだろうか。
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電磁波過敏症の分析2023年12月29日 07:28

 先日アップした無線マウス使用と携帯非接触充電器による指痛だが、ある知人によるとこのような感覚はバカな人間とおもわれるらしい。しかし、電磁波過敏症という日本に100万人はいるといわれる保険の利かないかもしれない症状(すなわち、公式には病気と認められていない、あるいは心因性とみなされている症状)でもあるらしい。米国の博士が最初に報告したらしいが、今も何のコンセンサスもない。

 スマホの電磁波基準を耳周辺の温度上昇で1度とすると、耳周辺の対象重量を1kgとした場合、その必要エネルギーは4.2ジュールであるので、このエネルギーはガンマ線なら4.2グレイに相当する。これは死亡する可能性もある、あるいは発がんがほぼ確実なエネルギーではある。電磁波とガンマ線は波長が異なるが、同じ光子という素粒子がエネルギーを運ぶ。
 いったい、真実はどの辺にあるのか。

 そこで、痛みとは何かから調査してみた。
モモタロウ痛みのクリニック
https://www.momotarou-painclinic.com/sick/reason/
のサイトに基本的なメカニズムが書かれている。
 痛みの悪循環というものが慢性疼痛の主要因らしい。痛みを慢性化しない、痛みを忘れるというのが重要だ。

 そういう意味で、電磁波で痛みを感じたら、電磁波を受けないよう、無線マウスから有線マウスに変える、非接触型充電器から手を遠ざけるというのは有効だったのだろう。今では、ほぼ、指の痛みは感じなくなった。それが心理的なものか、何らかの物理的、生理学的メカニズムが働いているのかは今の科学では分析が困難だ。だが、それをバカな話だという認識をするほうがバカなのかもしれない。
 電磁波はOKで放射線は×とか、その逆とかもあり得ない。
アルコールやウイルスと同様、これらもすべて定量的な最適点がある。それが地球上で何十億年も環境の変動に耐えながら、進化してきた人間、生物の持つ免疫機能のなせる業である。

 宇宙の95%は未知の物質またはエネルギーでできている。これは現代宇宙論の常識になっている。

 どんなエネルギー物質が指先に影響しているのだろうか。ETの指先から光が放たれる映像が象徴している。

ビッグバンとダークマター、ダークエネルギーの誤解2023年12月28日 06:41

  ビッグバンとは宇宙の始まりは空間の一点が爆発し膨張するというモデルであるとばかり思っていた。これなら、無限の宇宙空間という想像すらできない実在の無限を考える必要がないので、気楽に宇宙が語れる?。

 しかし、放送大学の宇宙の誕生と進化の講義(須藤靖先生)では、それは誤解だという。即ち、光の速度が有限なので、138億年前のビッグバンの直後の宇宙背景輻射による光が天球のすべての方向から来ているのが観測されるのは、ビッグバン時も宇宙が一点から膨張したわけではないことを示している。(ビッグバンという用語は、ビッグバン宇宙論を提唱したガモフの理論をトンデモだと揶揄した学者がつけた名前であり、ガモフは爆発だとか一点から膨張したとかいうことは一言も言っていない。単に膨張して冷却される過程で宇宙のあらゆるものができてきたというモデルである。)

 138億年より昔の時空はどうだったかについては、講義では、「恐らく」その外側にも宇宙は広がっているので、将来、その外側の宇宙も見えるはずだということである。

 ここで、やはり、無限の概念に戻らなければならないのは残念だが仕方ない。それで、宇宙の果てはどうなっているのかについて、今も天文学者は口を濁しているように見えるのだろう。


 さらにダークマターやダークエネルギーの概念である。これはブラックホールとは関係ない、ましてや、ブラック企業とは全く無縁の概念である。宇宙の拡大速度や重力バランスを考えると、現在観測で推定される宇宙の物質では説明がつかず、その数十倍の物質が宇宙には存在しているはずだということで、それがダークマターである。

 また、ダークエネルギーとは、一般相対性理論で、アインシュタインが宇宙の膨張速度を説明するために付け加えたいわゆる宇宙項と深く関係しており、万有引力ではなく、実効的に斥力に相当するエネルギーが宇宙項である。この結果、宇宙の膨張速度は加速しているのである。即ち、現在の想定ではダークエネルギーにより宇宙の膨張が加速しているということになる。

 驚くべきことに宇宙の既知の物質は宇宙エネルギーの5%だけであり(物質とエネルギーは等価だというのが相対論であるが)、残りの95%はダークマターとダークエネルギーだということである。

 この世の95%は未知の部分であるということでますます宇宙論が楽しくなってきた。

北朝鮮での新しい原子炉臨界の意味2023年12月22日 19:51

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6485839

によれば、寧辺核施設の新しい軽水炉から温水が排出されているとのことで、これがプルトニウム生産炉となっているらしい。

 ここで、この軽水炉が何なのかという問題がある。単に温水が排出されているだけなら、これは発電炉即ち原発ではない。

 原発とプルトニウム生産炉には大きな相違がある。これをマスコミも評論家も誤解している。

 プルトニウムとは、原爆の材料であるプルトニウムと、原爆の材料にはならないプルトニウムの2種類がある。その相違は、米国エネルギー省の定義にあるように、プルトニウム同位体組成比の差にある。プルトニウム原子核には含まれる中性子の数によりいくつかの同位体がある。

 簡単に言えば、プルトニウム-239が98%以上でないと爆発しない。それは、残りの大部分を占めるプルトニウムー239が自発核分裂を起こす性質があるためである。原爆の原理は、十分に臨界超過になるようにプルトニウムを圧縮してから、中性子を投入することで、大きな爆発力を生じる。しかし、プルトニウムー240がプルトニウムの圧縮過程で自発核分裂を起こすと、臨界になる前に大量の核分裂が生じてしまうので、その熱により膨張して、未臨界になり、爆発が不完全になるためである。もちろん、これは確率の問題であるが、この確率をほぼ0%にするには、プルトニウムー239を98%以上にしないといけない。このために、原子炉内でウランから発生するプルトニウムー239をすぐに取り出さなければならない。

 通常の発電用原発でもプルトニウム-239は発生するが、発電を数日続けるだけで240に変換されてしまう。数か月運転するだけでプルトニウムー240比率は5%以上になってしまうので、原爆の材料にすることは困難である。この発電用原発と原爆用プルトニウム生産炉の相違をもう少し、マスコミや評論家は認識する必要があるだろう。

 数年前に、米国ロスアラモスが開発したプルトニウム-240比率が5%程度でも爆発可能な装置を金正恩が手にしている写真が報道されたが、今も日本などで用いられている発電用軽水炉の使用済み燃料のプルトニウム(プルトニウム-240組成比約20%)では、北朝鮮をもってしても原爆は作れないということである。

JCO事故で中性子被ばくはどの程度だったか?2023年12月10日 05:45

 東海村役場に乗用車で突入した容疑者は1999年のJCO事故で体調を崩したと話しているという。

 原子力安全委員会のJCO事故の報告書では、

  「今回の作業は「常陽」の燃料用として、平成11年度に濃縮度18.8%、ウラン濃度380gU/㍑以下の硝酸ウラニル溶液を転換試験棟において製造することを目的としていた。
 作業は3人で実施され、29日から硝酸ウラニル溶液の製造を開始している。本来であればウラン粉末を溶解塔で硝酸を加えて溶解すべきところを、ステンレス容器(10㍑)でウラン粉末を溶解した後、作業手順書をも無視して、ステンレス容器(5㍑)及び漏斗を用いて、1バッチ(作業単位:2.4kgU)以下で制限して管理すべき沈殿槽に7バッチ(約16.6kgU)の硝酸ウラニル溶液を注入したとしている。
 上記の作業の結果、9月30日午前10時35分頃、沈殿槽内の硝酸ウラニル溶液が臨界に達し、警報装置が吹鳴した。この臨界は、最初に瞬間的に大量の核分裂反応が発生し、その後、約20時間にわたって、緩やかな核分裂状態が継続したものであった。10月1日午前2時30分頃から、沈殿槽外周のジャケットを流れる冷却水の抜き取り作業が開始され、午前6時15分頃、臨界状態は停止した。その後、ホウ酸水を注入し、午前8時50分には臨界の終息が最終的に確認された。
 この臨界による総核分裂数は、沈殿槽内の残留溶液の分析結果から、2.5×1018個と評価されている。 」

 これから即発臨界による瞬間被ばくであることがわかる。

 また、ガンマ線被ばくについては、
 
 「今回の事故により現場で作業をしていたJCO社員3名が重篤な被ばくをし、うち1名が12月21日に死去した。これら3名の線量はそれぞれ16~20グレイ・イクイバレント(GyEq)以上、6.0~10GyEq、1~4.5GyEq程度であった。このほか、56名の被ばくが確認された。そのうち36名についてはホールボディ・カウンタで検出され、その値は0.6~64mSv(暫定値)であった。また、フィルムバッジの測定結果により22名の被ばくが確認され、その値は0.1~6.2mSv(1cm線量当量)(ガンマ線)であった。なお、フィルムバッジで検出された22名のうち2名はホールボディ・カウンタでも検出されている。
また、臨界状態の停止のための作業等に従事したJCOの社員24名について、被ばくが確認され、ホールボディ・カウンタで検出された者の値は9.1~44mSv(暫定値)で、線量計(ポケット線量計)で測定された者の値は0.03~120mSv(1cm線量当量)(暫定値)であった。」

 とのことで、ガンマ線の被ばくは広島・長崎の被ばく者評価から、がん発症影響に関するしきい値(一部放医研研究者などの見解では150mSvと言われている)以下の値であったと考えられる。

 では、中性子被ばくはどうだっただろうか。

 容疑者は役場の対応に不満を持ったようだが、心理的影響だと切り捨てる前に、ICRP基準で、吸収線量当たりガンマ線の10倍程度の影響があると言われている中性子線に対する被ばく評価を正確に見積もる必要はあるだろう。

 Weinburg/WignerのThe Physical Theory of Neutron Chain Reactors、p.128によれば、U-235の核分裂当たりのエネルギ配分は、即発ガンマ線のエネルギーは6±1MeVで、中性子の運動エネルギーは5MeVである。
  
 一方、ICPRの線質係数は、ガンマ線1に対し、中性子約10(正確には線質係数には中性子エネルギー依存性があるが)である。

 これから、JCO関係生存作業者の中性子線による被ばく線量は、最大でおよそ

 120×5/5×10=1200(mSv)

となる。この報告書からは、ガンマ線を120mSv被ばくした作業者は、爆発時に室外にいたはずで、中性子はこれほどは被ばくしていないはずである。爆発時には室外(コンクリート壁の外側)にいたからである。

 では、容疑者はその時、どの程度被ばくしただろうか。最大1200mSvとして、JCO事業所からどの程度はなれていたかが問題となる。

 建屋や空気の遮へい効果を無視すれば、ほぼ距離の2乗の逆数で減衰する。容疑者はJCO社員ではないはずだから、敷地境界の外部にいたはずである。報告書図1からは事故のあった転換試験棟から県道連絡線まで約60mである。上記JCO社員が線源から10m位置で作業していたと仮定すると、容疑者が被ばくできる最大中性子線量は

 1200×(10^2/60^2)=33mSv

であり、上記のしきい値より十分小さい値となっている。
 ある情報では容疑者は久慈地区に住んでいたようであり、その場合には距離は1000m以上あるので0.1mSvとなり、飛行機で海外旅行をするよりも小さい。

 役場職員はこのような定量的評価値を容疑者に示した方が説得力はあったかもしれない。

 福島事故でも同じだが、放射線被ばくとは、物理化学的影響よりも心理的影響、即ち”放射線プラセボ”(放射線を浴びたという認識によるストレス影響)が効いてくるものである。今回のような思い込みによる悲劇の再発を防ぐには、放射線の人体影響及び人体の対放射線免疫機能に対する正確な知識習得と公報、ICRP基準と考え方の見直しが必要であろう。メディアも従来の報道姿勢を改め、まずは科学的な分析能力を身に着けるべきだ。

無線マウスと低周波治療の差2023年11月26日 05:50

 量子論によれば周波数νの電磁波のエネルギーEはプランク定数hを用いて
  E=hν
ということになっている。

 手元の無線マウスで通信に使われる周波数は2.4GHzだが、運動選手の疲労回復や、整体治療で用いられる低周波治療の周波数は1200Hzだそうである。

 即ち、エネルギーで2000倍の差がある。

 但し、これは電磁波の粒子である光子1個のエネルギーである。

 光子の個数はその装置や発生源からの距離に依存するので電磁波を被ばくしたときの全エネルギーは状況次第ではある。

 しかし、光子自体は細胞内の原子核や電子との相互作用でエネルギーをやり取りし、生体に影響をおよぼすのであるから、第一義的には光子のエネルギーが重要なファクターであろう。

 こう考えれば、電磁波の周波数が最も重要である。即ち、適度な治療効果を得るには、高すぎても、低すぎても良くない。
 がんの放射線治療とがん予防の規制の関係の場合は、数ミリシーベルト以下に規制しながら、放射線治療では数シーベルト以上を照射するのに比べれば、電磁波の規制のほうが妥当性は高い。電磁波の場合は、被ばく基準の基になった原爆や太陽フレアインパルシブ相のような瞬間被ばくが考えられないということも利いているのかもしれない。

https://3rrr-btob.jp/archives/column/measuring-equipment/20678

によれば、周波数により電界強度に国際的な基準があり、スマホなどの電気製品もこの基準で製造されているはずだが、放射線同様その基準値自体が根拠は明確になっていない場合が多い。一般的には周波数が高いほど電界強度の規制値は小さくなっている。

 しばらくは、電磁波の基準は一般人に対するものと考え、高周波の電磁波を他人より多くは浴びないように工夫するのが良いと思う。

 即ち、無線マウスを一日中使うようなことは一般人とはかけ離れているはずで、あまり体には良くないということになる。