JCO事故による被ばく健康影響の再考2023年12月12日 05:05

http://www.murasugi.com/contents/document02-004

には元新潟大学安保教授による被ばくと健康影響の図(ホルミシスを提案した米国ラッキー教授案)が引用されている。放射線ホルミシスはまだ定説にはなっていないが、物質による生体影響は一般に最適点があるので放射線である光子にも最適点があって不思議ではない。

 この図では、年間被ばく量が1mGy/年~10000mGy/年の間が健康に過ごせる範囲であり、その最適値は100mGy/年ということになっている。

 JCO事故は即発臨界事故であり、瞬間被ばくをしたので、広島原爆と同様、被ばく時間は1m秒だと仮定する。
 上記の上限値10000mGy/年を1m秒当たりに換算すると

10000/(365×24×3600×1000)=3.15E-7mGy/m秒

となる。(E-xは10の-x乗を示す。)
ガンマ線なのでmGyはmSvと同じ生体影響である。

 健康維持のための下限値1mGy/年は同様に

3.15E-11mGy/m秒

であり、これ以下の被ばく量では健康上の問題が生じると上記記事では主張している。

この被ばく量が1m秒あたりの瞬間被ばくの許容限度になる。

 12月10日の本サイトの記事では、JCO事故での生存作業者の最大線量は1200mSvだった。これは瞬間被ばくなので、上記仮定から

1.2E3mSv/m秒

と同じことであり、10ケタ大きい。

逆に言えば、瞬間被ばくは慢性被ばくよりも10桁程度は危険ということになる。

 即ち、慢性被ばくであれば、許容された被ばく量でも瞬間被ばくでは許容されない被ばく形態があるということである。これは被ばく継続時間に大きく依存する。

 広島原爆では150mGy程度からがん発生が放射線影響が認められるようになっている。即ち被ばく継続時間が1m秒とすると

1.5E2mGy/m秒

でがん発生が増加する。JCO事故の生存作業者はその10倍被ばくしたのでがん発生増加はありうる。

 しかし、東海村役場に車で突入した容疑者の被ばく量は中性子とガンマ線の線質効果を考慮したうえで得られた被ばく量で33mSv/m秒
なである。しかもこの値は、容疑者がJCO事業所に隣接して住んでいた場合である。
 この数値は、上記1500mGy/m秒の0.022倍であり、がん発生は考えられないということになる。喫煙習慣があるならば、その影響による発がん確率の方がけた違いに大きい。

 彼がこのような評価を承知していたなら、村役場突入は躊躇したのではないだろうか。

 備考)広島原爆の被ばく者線量評価ではGy単位での線量評価を行っている理由は、原爆爆発位置が地上約600mで生存者までの距離が長いために、中性子の空気層などによる遮へい効果が大きく、中性子の線量効果がガンマ線の10%程度と小さいという理由でガンマ線の1.1倍が全体の線量という評価を行っているためである。但し、原爆内部での遮へい効果は軍事機密により今も未公開となっている。なお、原爆の爆発時間は1μ秒以下と書かれている資料もあるが、これは適当な数字で実際には100μ秒から1m秒程度と評価できる。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yokoyamashindo.asablo.jp/blog/2023/12/12/9641998/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。