非常用ドアコック問題をAIは解決できるのか2021年11月04日 06:25

 先日の京王線刺傷事件対応では、非常用ドアコックの運用で議論が起こっている。
 WIKIによれば、電車の非常用ドアコックは、1951年の桜木町の電車火災では知られてなかったため、多数の死者が出たが、その後の三河島事故では、乗客がこのドアコックを知っていたため、車外にでて、他の電車に轢かれ多数の犠牲者がでた。
 このように、安全性を上げようとして設置されたものが場合によっては逆効果になってしまう問題はよくあることである。
 
 今回の京王線事件では、更に複雑で、一部乗客がどこかの車両のドアコックを開けたことを運転手が認識できたため、ホームドアとのずれを修正しようとしたさいに、手動でドアが開けられていれば危険な状態になると考え、運転手は車両の移動をためらったらしい。そのうちに窓から客が出始めたため、更に運転手と車掌は何もできなくなったようである。

 では、AIがこの京王線事件を対処しようとしたらどうしただろうか。現状では、AIが認識している情報が数台のカメラ、車両挙動、運転手、車掌からの情報などに限られているので、何もできないだろう。
 さらに多くのカメラ情報や、不審者情報もAIが知っていたとしても、上記の複雑な経緯の中で、最適な解を得ることができただろうか。

 今回の状況では、京王電鉄側の対応は妥当だと評価されている。
運転手が最初に停止した位置をピッタリホームドア位置に合わせていたならば多少は違うかもしれないが、非常時には多少の齟齬は良くある話である。ホームドアの構造も駅や路線でかなり異なっているようである。
 
 このような現状では最適解はAIでは得られないであろう。更に、事故経験を積むしかないかもしれない。しかし、このような事故状況は、過去の電車事故でも一部あったのでその知識を取り入れることで最適解に近づくかもしれない。また、このような、安全装置による逆効果現象は、多くのシステムで見られることである。その知識をAIに取り入れ記憶することは可能であろう。しかし、それをどのように対応方法に取り入れられるか、その想像力がAIにどこまで期待できるか、おそらく、AIを動かす人間たちの想像力、創造力の強化が重要になる。
 暫くは、事故現場に居合わせた人間の知恵と直観力に頼らないといけないだろう。