被ばく基準とICRPの利益相反問題2024年05月12日 05:42

 太陽フレアの被ばくは瞬時被ばくであり、年間被ばく量にすれば大した量ではない。なぜなら、時間線量率では大きな値の被ばくを受けるが時間がミリ秒レベルなので、他の時間は被ばくを受けないので、年間被ばく量としては制限規制値以下になる。
 米国のCA(キャビンアテンダント)の乳がん発症率は一般女性の三倍との報告もあるが地球大気による放射線遮蔽が期待出来ない高空で太陽フレアを被ばくしたのち、がんを発症したらそれは地上での被ばくのためなのか、高空での太陽フレアによる被ばくのためなのかはわからない。現在の基準では年間被ばくが制限されており、時間線量率が如何に高かろうと、時間積分線量が規制値以下なら太陽フレアの瞬間被ばくは許されているのである。

広島・長崎では被ばく者のがん発症率は市外居住者より有意に大きい事は明確だ。従来、これのみが、外部被ばくとがんの発生が関係していると見られる唯一のデータである。他のデータは殆どが統計的に疑問を呈されている。広島・長崎の被ばく者でがんを発症した生存者は最大でも5シーベルトの瞬間被ばくである。これは放射線がん治療でがんを治療する際に照射して受ける線量(前立腺なら十時間程度の照射で70シーベルト)の1/10レベルである。即ち、原爆の爆発時間である約1ミリ秒の瞬時に被ばくを受けるとがんになり、放射線がん治療で十時間程度の時間を掛けてその10倍の被ばくを受けるとがんが治るという関係にある。

これは、がん細胞と健全細胞の分裂時間サイクルやDNA修復遺伝子の作用時間という免疫機能の短時間挙動に関わる生体応答に深くかかわっている。それを無視して長時間での被ばく基準のみを正しいとして全世界に勧告し、その無意味に小さい規制値にそって各国政府が法律を設定し、それゆえに、CAなど(頻回の航空旅客も同じだが)太陽フレアによるがん発生のリスクにさらされることになる。それは被ばく基準よりも十分小さいが、免疫機能に重要な単位時間当たりの線量率の議論を無視した基準だから当然と言える。

各国に放射線防護のための被ばくに対する規制値を勧告しているICRP(国際放射線防護委員会)は任意の科学者の団体ということになっている。しかし、そのサイトには
https://icrp.org/docs/The%20History%20of%20ICRP%20and%20the%20Evolution%20of%20its%20Policies.pdf
には今も下記のように記載されている。
”in 1960, the Ford Foundation provided a grant of $250,000 to
ICRP, a very significant amount at the time, which meant that some funds were
now available for secretariat and travelling and meeting costs.”
即ち、フォード財団から1960年代から大きな資金援助を受け、それで、被ばく基準を決めている科学者たちの費用を賄ってきたのである。
フォード財団は自動車メーカーであるフォードが設立した財団であり、石油資源の開発を目的としている。
その財団から、原子力関連の基準を勧告している任意機関へ巨額の資金援助をおこなってきたのである。

これは、科学技術論文で最も避けなければならない利益相反そのものである。利益相反とは、その研究論文が、中立的であり、その研究結果により、利益、不利益を受ける組織、団体とは資金的にも無関係であることを宣言するための倫理事項であるが、ICRPは原子力利用に深くかかわる多くの勧告を出しながら、化石燃料資源の開発団体から多額の援助を受けてきた。ICRPに所属する科学者や、ICRPの出版物には一切そのことが触れられていない。即ち、利益相反の倫理規定に違反した基準なのである。

それを日本を含む各国政府、各国民が任意の科学団体だからという建前で信じ切っているのが、戦後の世界なのである。もちろん、国内の大手マスコミもこの基準に沿った、即ち、年間被ばく量は1ミリシーベルト以下にすべきであるーというような化石燃料に有意になるような様々な言論活動を行っている。まさに、石油メジャーの世論操作に乗ってしまったのである。そして、地球温暖化が急速に進み、原爆での犠牲者以上の多くの犠牲者が世界中で生まれている。このような組織や基準は早急に見直し、中立的な期間でより科学的で合理的な基準に変更する必要がある。