浴室の紫外線による消毒方法について2023年03月04日 08:58

 モーニングショーなどの報道によれば、九州のとある有名温泉旅館では公衆浴場法違反の絡みで社長が交代したそうである。どうもお湯の入れ替えを年に2回しかしなかったようだ。

 確かに、お湯の中の細菌類は清潔に保たない場合にはかなり簡単に増殖する。
 その細菌を吸い込むことで感染症に罹患する確率が上がる。

 先日、肺マック病(非結核性抗酸菌症)になった家人の対応のために、いくつかの対策を行い、有効性があったようだ。(2023年2月22日ブログ記事)

 その主な方策はUV-C(高エネルギ紫外線)による浴室消毒である。卓上型の紫外線照射装置で一日15分程度照射する。その間は浴室には立ち入れないが、人感による照射停止装置が付いているので安全性はある。このフィリップス製4200円の簡単な装置により、浴室内が清潔になった。タイル目地の黒ずみがなくなった。クレンザーによる洗浄は不要で、時々液体洗剤で流すだけで十分だ
 
 では、UV-Cの殺菌力、人体への影響はどの程度だろうか。

詳しくは
https://e-dnl.jp/media/UV-QA
に出ているが、1m位置で15W照射装置の場合、このフィリップスの説明にあるように15分もあれば浴室表面消毒には十分である。目や皮膚に影響があるが、直接照射を受けなければ人体への影響はない。お湯は捨てた状態で照射するので、バスタブ内も綺麗になる。

 では、浴槽の底の消毒をお湯を張ったまま行うと想定した場合を考える。温泉の場合は、入浴できない時間は短い方が方が客にとっても望ましい。問題は、水中でどの程度UV-Cが減衰するかである。その実験をした、
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jieij1917/36/3/36_3_89/_article/-char/ja/
 の図6によれば2537nm紫外線で、25㎝の水の透過で線量は半分になる。
即ち、1mの水深とすると指数関数的に減衰するので、水表面の約6%の線量となる。(これは核分裂ガンマ線の水中での減衰率と大差ない。)
 従って、1m水深の浴槽底の消毒には
 15分/0.06=250分(約4時間)
の照射が必要である。
 これだけの立ち入り禁止時間を設けた上、各水面の点から1m以内に照射装置が配置する必要もある。即ち、多くの照射装置と電力が必要である。これでは、お湯の入れ替えをして人力で浴槽を清掃したのほうが経済的だろう。
 なお、ひとくちにUV-Cと言っても、減衰率の波長依存性が大きい。マウス実験によりDNAに影響しない波長を見つけ、売り込もうとしている装置もあるが、マウスとヒトではDNA修復機構が異なるので注意が必要だ。

 生物の進化の過程で、海中で進化を遂げた生物種が、海中から地上に進出するには、酸素生成、すなわち、葉緑素を持つ植物の進展と上空での酸素の放射線分解で出来るオゾン層の生成による太陽紫外線の遮へいが必要だった。即ち、紫外線や太陽ガンマ線は生物一般に有害だが、オゾン層の遮蔽効果により、海水中から地上に進出できた。その過程で、地表の生物は紫外線、ガンマ線にはある程度耐えられるようになり、免疫ができるようになった。紫外線レベルは緯度に依存し、また、ヒトのこれらの放射線にたいする耐性は皮膚色により変わるので、大航海時代以降は低緯度に移住した白色人種の皮膚がんが問題になってきた、
 今や宇宙旅行時代であり、ジェット機による高高度旅行時代でもあるので、宇宙線による被ばく、特に太陽フレアによる瞬間高線量率被ばくが白血病などの増大に影響する。大気圏外でのガンマ線は地表より一桁大きい。
 早急に紫外線、ガンマ線の線量率を考慮した被ばく基準の見直しが必要である。