核を保有したら貧困国になるワケ2025年12月21日 06:24

2025年08月02日の本ブログ記事「核保有で軍事費を安くできるという幻想」でも記載したが、某首相補佐官は核保有の困難さと不利益について理解ができていない。それは一部マスコミと国民も同じだろう。

整理すれば核兵器開発には以下の課題があり、これを行えば日本は北朝鮮やパキスタン以下の貧乏国になり果てるということである。

(1)日本には核兵器に使えるプルトニウムはない。
(2)核兵器を運搬できる手段もない。
(3)核兵器の小型化技術もない。
(4)他国から小型化技術を入手する方法もない。

独自にこれらの課題を解決しようとすれば長期かつ膨大な予算が必要になり、諜報能力のない日本国は北朝鮮以上の貧困国になる。核兵器を保有しても経済的な利益はゼロに等しいうえ、その維持には膨大な軍事費が必要になる。以下、上記の課題の詳細を示す。

(1)プルトニウム問題
 一部国民には日本がプルトニウムを保有しているので原爆は簡単に作れるとの誤解がある。ところが実際には日本の保有しているプルトニウムは原爆にはなりえない組成のものである。これは軽水炉で生成されるプルトニウムの同位体の中のプルトニウム-240が自発核分裂をすることに起因する。プルトニウム原爆が爆発するにはプルトニウム-240比率をプルトニウム全体の3%以下にする必要がある。(米DOEの核兵器プルトニウム組成基準)
 原爆は超臨界(実効増倍率が2以上)になった後に中性子を投入することで爆発するのであるが、自発核分裂により発生する中性子が超臨界になる前に自然に発生するため、核分裂による熱膨張のためすぐに未臨界になり爆発できないのである。
 しかし、軽水炉で生成されるプルトニウム-240比率は20%以上であり、核兵器用のプルトニウムを生産するには新たな原子炉を建設し、長期間運転する必要がある。米国ワシントン州には発電しないプルトニウム生産専用の原子炉が6基ほどあるが、これを日本が国家予算で開発しようとすれば十兆円以上の費用を超える。
 広島型の濃縮ウラン原爆はどうかと言えば、ウラン-235を93%以上に濃縮する必要があり、軽水炉ウラン(ウラン-235約5%以下)より20倍以上の大きい濃縮プラントが必要になるため、米国でもこの開発はあきらめ、長崎型のプルトニウム原爆に絞っているのである。

(2)運搬手段問題
 運搬手段は核兵器の実用化に欠かせない。自国においてあるだけではかえって自分自身が危ない。暴発の危険があるためである。現在、実用化されている運搬手段はICBMと原潜である。これらはいずれも日本は保有していない。大型輸送機はあるが、他国からのロケット攻撃で国内で落下する可能性のほうが大きい。ではICBMの開発にどの程度の費用が掛かるのか、H-8型ロケットで苦労しているJAXAに聞いても答えられないのではないだろうか。北朝鮮のような貧困国になる覚悟が必要だろう。原潜も米国が核兵器つきで日本に渡すとは考えられない。

(3)小型化技術問題
 仮にICBMや原潜が開発できたとしても原爆を小型化できなければ乗せることはできない。現在、米国やロシアの原爆はテラー型という小型水爆とプルトニウム原爆を組み合わせた精密な中性子制御技術を用いて小型化を図っているが、その詳細は機微技術そのものである。自主開発にはテラー並みの天才と高度なIT技術が必要である。現在の日本にはそのような人材も技術も見当たらない。国立大学の予算を削らざるを得ない日本政府にその能力を期待することは幻想だろう。

(4)他国からの導入
 北朝鮮はその諜報能力の高さでこの技術を何処かから入手したと思われるが、日本の諜報能力では世界最低レベルである。
 現在の日本に核技術を提供してくれる国がどこかにあるだろうか。同盟国であったとしても、核兵器を安全に維持することに手間と技術と費用が掛かることは常識である。
 そんな費用があるのならそれを我々核保有国に提供してくれと日本に要求するはずだ。

 核保有の能力も余力もない日本が核保有と言い出すことは、北朝鮮のような国が一つ増えるだけであり、非現実的でどこの国にとっても利益にならないことである。

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