ウクライナの放射能爆弾はどの程度汚染することが可能か2022年10月28日 15:00

 報道によれば、ロシアのジョイグ国防相はウクライナが放射能爆弾で地域を汚染することを計画しているとのことである。単なる情報戦の疑いが強いが、信憑性を確認してみる。
 今、ウクライナが利用できる放射性物質で、どの程度の汚染被害が可能かを以下の仮定で試算してみた。

 ウクライナには核燃料再処理施設がないので、核分裂生成物(FP)を分離抽出することはできない。即ち、使用済み燃料をそのまま使用せざるを得ない。
 最も放射能レベルの高いのは最近停止した原子炉における使用済み燃料である。戦争の影響で、すでに停止しているはずなので、100万キロワット級原子炉の使用済み燃料が3か月停止後のレベルの放射能を持ち、一基分利用できるとする。それでも重量では百トンオーダーである。但し、ウランやプルトニウムの放射能は核分裂生成物に比べ一桁以上レベルが低いので無視する。
 以上の仮定で、一基分の放射能を求めると,
100万キロワット(熱出力は3000MWt相当)で4年運転したと仮定し、1核分裂当たり200MeV放出されるとするとMWtーMeVの単位換算より、
 3000×4×365×24×3600/1.602E-19/200=1.18E28(核分裂数)
となる。
 4年運転したということは平均崩壊期間は2年3か月となるが、この期間に崩壊熱は2桁減少するので、FP数も2桁減少するとすると、FP数は
 1.18E28×2/100=2.36E26

 福島での被ばく評価では、Cs-137が1平方メートル当たり100MBqの濃度で直径2キロメートルの範囲(3.14E6平方メートル)に散布された場合、中心の線量率は3マイクロシーベルト/毎時と見積もられている。

 上記のFPがすべてCs-137と仮定すると、Cs-137の半減期は30年なので、崩壊定数は
 ln2/(30×365×24×3600)=7.32E-10/s

即ち、上記FPは
7.32E-10×2.36E26=1.73E17Bq
に相当する。

仮に直径200キロの範囲にFPを散布できたとすると見積もり線量は
1.73E17/(200×200/2/2)×7.32E-10/1E6×3=0.04μシーベルト/毎時(0.35ミリシーベルト/年)
となる。
即ち、広範囲に散布した場合、その効果は無視できる程度である。
仮に都市圏(直径20キロ)の範囲に散布したとしても最大で35ミリシーベルト/年であり、固形がん発生のしきい値(200ミリシーベルト)以下といわれているレベルで、恐怖を感じるほどの影響はないと考えられる。

因みに某国の首都の中枢拠点( 推定直径2キロメートル)に集中的に散布できれば、更に2桁上がるので、35シーベルト/年となり、かなり致命的な値であるが、瞬時被ばくではないので即死はしない。
いずれにせよ、ウクライナ空軍には某国首都を爆撃できる能力はないだろう。

以上が、本情報がフェイクであると推定される理由でもある。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yokoyamashindo.asablo.jp/blog/2022/10/25/9535752/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。