危険な山行(参考)2024年07月16日 20:17

ハイキングとは実は高みに登ることで、日本語のイメージとは異なる。カテゴリの都合でここに今までの危険な山での瞬間を反省を込めて纏めた。

いずれも、事故への伏線はあったが、その時点では予測出来ず、一瞬の判断ミスがあれば死亡事故につながっただろう。

主観的にヤバかった順に記す。

⑴オツルミズ沢の奇跡
これは、普通なら二人死亡の記事が出ていた奇跡である。この沢は、越後駒ケ岳の南東部にあり、数十メートルの滝が連続する。

前日、徹夜で仕事をして寝不足だった私は、先輩のリードで、何とか後を追っていたが、ある壁面では、力尽きてザイルにぶら下げってしまうような疲労困憊状
態だった。

その結果、明かるいうちに山頂に到達できず、約50メートルの滝の上でビバークすることになった。しかし、滝の落ち口は狭く、座って寝る以外ないほど狭
かった。ハーケンとザイルで、ビレーしたとしても不安感はある。そこで、薄暗い中、先輩は左側の壁をひとり登って行った。横になって眠れる平地を探すため
である。

その瞬間、落ち口に立っていた私は胸に強い衝撃を受けた。先輩が落ちてきたのである。このままでは二人とも滝の下だ。一瞬、右側に滝の落ち口の水たまりが
あること気づき、先輩の体を右に打っちゃった。

その時間は、恐らく0.1秒以下だろう。先輩は、秋の寒さの中で水に落ち濡れ鼠になったが、ともかく、二人とも死なずに済んだ。先輩が落ちてきたのは、
アップザイレンのために打ったハーケンが抜けたためだった

ただ、当時、私は中性子散乱の勉強をしていたので、無意識のうちにまともに受けず、先輩を斜めに打っちゃることで力を分散させたのかもしれない。ビリヤー
ドの斜め打ちの原理である。

(2)井戸沢の彷徨

蔵王刈田岳直下に流れる井戸沢の源頭はカール状で、雪質もよく、山スキーの練習には、最適である。ある年の初春、友人を誘ってふたりで清渓小屋をベースに
山スキーと洒落こんでみた。小屋から井戸沢のカールまでは10分程度である。軽装でスキーを楽しんでいた。
昼になったので、ふたりで雪面に座って食べたのだが、やや風がある。ツエルトをかぶって食べたほうがいいだろう。とそこまではよかった。

10分ほど食べて、ツエルトを両手で上げた時に愕然とした。ガスで20メートル先が見えない。しかも、小屋から歩いてきたスキーのシュプールが風で消えて
いた。

GPSなどない時代である。大体の方向は、わかるのだが、ほとんどが真っ白い世界である。小屋への正確な方向が分からなければ、この軽装で一晩氷点下20
度にもなるなかで過ごすことになる。二人で必死になってシュプールを探した。しかし、一時間探しても見つからない。次第に暗くなってきた。刈田岳山頂に避
難室があるのはわかっていたが、この軽装でどうなるのだろうか。しかも、一時間は見ないとつかないだろう。どうするどうするーと思った瞬間、雪面に微かな
二本の溝が見えたのである。(今考えると、日が傾き薄暗がりになったから溝の影がわかったのかもしれない。)
二人は、その溝を追って、何とか清渓小屋に戻ったのである。

(3)松木沢での落下

松木沢は、足尾銅山の西方に位置する。当時、鉱毒で樹木がかれたおかげで岩面が露出し、良いロッククライミングのゲレンデになっていた。私は三人パーティ
の最後だった。大きな岩が目の前にあり、ザイルに繋がれていることもあって、両手で無理やり体を持ち上げた。

その瞬間、手をかけていた大岩が20メートルも落下し、私はザイルにぶら下がったのである。私がトップかセカンドなら、確実に1人は殺していただろう。鉱
毒は岩をも蝕んでいくいたのであることが説明できる。

以上、若気の至りでした。