固形がん発症率の広島と長崎の差への疑問 ― 2025年01月09日 07:20
以前も広島と長崎の原爆について映画オッペンハイマーが混同していることを書いたが、現在の被ばく基準で用いているICRPやRERF(放射線影響研究所)も明確な区別をしていない。同じ被ばく量ならば、両市で同じ傾向になるはずだ。
(もし、放射線を放出する核種により、生体影響に差があるならば、グレーやシーベルトという単位で生体影響を定量化することはできず、ウラン型の広島とプルトニウム型の長崎で被ばく量と生体影響が異なることもありうるかもしれないが、そうなるとセシウム被ばくの福島にはそもそもICRP基準は適用できないことになる。)
実際にRERFのデータを用いて、男性被ばく生存者の固形がん被ばくの両市の差を統計ソフトRで被ばく線量ごとに解析してみると、以下のような大きな差がある。 広島では366mGyから365mGyの間で、リスクが正から負に変わっており、単純に言えば365mGy以下では、被ばくによりがんに掛かるリスクは減っているということになる。即ち、この付近にしきい値があるのである。しかし、長崎ではしきい値が現れていない。米軍やRERFの前身であるABCC(原爆傷害調査委員会)のまとめたデータベースのどこかに系統的なエラーがあるとしか考えられない。
なお、本検討では、1990年以前の解析とはことなり、がん発生要因の主要な項目である調査対象者の喫煙状況の影響が正しく反映されるよう、喫煙状況不明者を除いている。このような分析結果は、現在のICRPの基準、即ち、現在の日本を含む法令で定められた基準にも反映されないままであり、被ばく量と過剰相対リスクの関係は直線であり、被ばく線量とがん発生リスクの関係はほぼ比例すると仮定されている。
即ち、366mGy以上の高線量範囲(具体的には3400mGyの範囲での過剰相対リスクが低線量範囲まで線量に比例して低下するという直線しきい値なし仮定(LNT仮定)が使われているのである。その大きな根拠がRERF等による広島・長崎の被爆者データ解析であり、福島の避難区域設定にも使われている。即ち、映画オッペンハイマーで見られるように、日本は太平洋戦争、米ソ冷戦依頼、計3回、米国およびその影響下にあったABCC,RERFとICRPのいい加減なデータベースによる被害を受けたのである。
このようなデータが、ICRPの被ばく基準、即ち、我が国の法律で決まっている被ばく基準のベースなのである。統計精度がある程度確保されているはずの瞬時被ばくのデータベースでさえこのような矛盾に満ちた状況である。いかに不完全なデータベースのもとで我々は放射線影響を判断しているのかがわかる。
評価線量範囲の 1Gy当たりの固形がん発生過剰相対リス
直腸最大線量 (被ばくが0の場合に対するリスク増加比)
評価線量範囲の 1Gy当たりの固形がん発生過剰相対リス
直腸最大線量 (被ばくが0の場合に対するリスク増加比)
(mGy) 広島 長崎
評価線量範囲の 1Gy当たりの固形がん発生過剰相対リス
直腸最大線量 (被ばくが0の場合に対するリスク増加比)
(mGy) 広島 長崎
370 0.05014384 0.3218923
369 0.03921758 0.2621733
368 0.04399446 0.2840757
367 0.02078363 0.3266424
366 0.01600546 0.3311220
356 -0.07718261 0.4395684
355 -0.06092961 0.4501425
354 -0.06301736 0.4746947
353 -0.05270192 0.3870624
346 -0.05668218 0.3279153
345 -0.0513327 0.3279153
344 -0.04437882 0.2876345
343 -0.04190011 0.3298557
342 -0.0245894 0.3326452
338 -0.001502919 0.2797840
333 -0.09260494 0.3204773
332 -0.001612864 0.322535
331 -0.001573156 0.3709325
313 -0.002300576 0.2830735
311 -0.002165569 0.2907617
309 -0.002775812 0.2912475
282 -0.01406185 0.3043829
281 -0.013195 0.293223
278 -0.3014552 0.2179566
136 -0.6655109 1.2151276
135 -0.6341554 1.1515731
134 -0.002092768 1.1041003
133 -0.538726486 1.240648
132 -0.5913186 1.0453058
131 -0.53967183 0.7007727
130 -0.001779996 0.5850069
129 -0.52713219 0.6372332
128 -0.53059088 0.6372332
127 -0.4848428 0.538797
126 -0.003870772 0.5492105
115 -0.2554249 0.572928
113 -0.003052164 0.5577695
111 -0.005447146 0.6463547
107 -0.007178959 0.8934375
105 -0.002949315 0.4872323
102 -0.41597588 0.5872866
101 -0.002665859 0.4793594
90 -0.6632563 0.7595273
89 -0.9130388 0.8539176
88 -0.007943117 0.9064776
87 -0.9925226 0.7674534
(もし、放射線を放出する核種により、生体影響に差があるならば、グレーやシーベルトという単位で生体影響を定量化することはできず、ウラン型の広島とプルトニウム型の長崎で被ばく量と生体影響が異なることもありうるかもしれないが、そうなるとセシウム被ばくの福島にはそもそもICRP基準は適用できないことになる。)
実際にRERFのデータを用いて、男性被ばく生存者の固形がん被ばくの両市の差を統計ソフトRで被ばく線量ごとに解析してみると、以下のような大きな差がある。 広島では366mGyから365mGyの間で、リスクが正から負に変わっており、単純に言えば365mGy以下では、被ばくによりがんに掛かるリスクは減っているということになる。即ち、この付近にしきい値があるのである。しかし、長崎ではしきい値が現れていない。米軍やRERFの前身であるABCC(原爆傷害調査委員会)のまとめたデータベースのどこかに系統的なエラーがあるとしか考えられない。
なお、本検討では、1990年以前の解析とはことなり、がん発生要因の主要な項目である調査対象者の喫煙状況の影響が正しく反映されるよう、喫煙状況不明者を除いている。このような分析結果は、現在のICRPの基準、即ち、現在の日本を含む法令で定められた基準にも反映されないままであり、被ばく量と過剰相対リスクの関係は直線であり、被ばく線量とがん発生リスクの関係はほぼ比例すると仮定されている。
即ち、366mGy以上の高線量範囲(具体的には3400mGyの範囲での過剰相対リスクが低線量範囲まで線量に比例して低下するという直線しきい値なし仮定(LNT仮定)が使われているのである。その大きな根拠がRERF等による広島・長崎の被爆者データ解析であり、福島の避難区域設定にも使われている。即ち、映画オッペンハイマーで見られるように、日本は太平洋戦争、米ソ冷戦依頼、計3回、米国およびその影響下にあったABCC,RERFとICRPのいい加減なデータベースによる被害を受けたのである。
このようなデータが、ICRPの被ばく基準、即ち、我が国の法律で決まっている被ばく基準のベースなのである。統計精度がある程度確保されているはずの瞬時被ばくのデータベースでさえこのような矛盾に満ちた状況である。いかに不完全なデータベースのもとで我々は放射線影響を判断しているのかがわかる。
評価線量範囲の 1Gy当たりの固形がん発生過剰相対リス
直腸最大線量 (被ばくが0の場合に対するリスク増加比)
評価線量範囲の 1Gy当たりの固形がん発生過剰相対リス
直腸最大線量 (被ばくが0の場合に対するリスク増加比)
(mGy) 広島 長崎
評価線量範囲の 1Gy当たりの固形がん発生過剰相対リス
直腸最大線量 (被ばくが0の場合に対するリスク増加比)
(mGy) 広島 長崎
370 0.05014384 0.3218923
369 0.03921758 0.2621733
368 0.04399446 0.2840757
367 0.02078363 0.3266424
366 0.01600546 0.3311220
356 -0.07718261 0.4395684
355 -0.06092961 0.4501425
354 -0.06301736 0.4746947
353 -0.05270192 0.3870624
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345 -0.0513327 0.3279153
344 -0.04437882 0.2876345
343 -0.04190011 0.3298557
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309 -0.002775812 0.2912475
282 -0.01406185 0.3043829
281 -0.013195 0.293223
278 -0.3014552 0.2179566
136 -0.6655109 1.2151276
135 -0.6341554 1.1515731
134 -0.002092768 1.1041003
133 -0.538726486 1.240648
132 -0.5913186 1.0453058
131 -0.53967183 0.7007727
130 -0.001779996 0.5850069
129 -0.52713219 0.6372332
128 -0.53059088 0.6372332
127 -0.4848428 0.538797
126 -0.003870772 0.5492105
115 -0.2554249 0.572928
113 -0.003052164 0.5577695
111 -0.005447146 0.6463547
107 -0.007178959 0.8934375
105 -0.002949315 0.4872323
102 -0.41597588 0.5872866
101 -0.002665859 0.4793594
90 -0.6632563 0.7595273
89 -0.9130388 0.8539176
88 -0.007943117 0.9064776
87 -0.9925226 0.7674534
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