不連続連載小説 松尾大源(8)2024年06月21日 11:00

 ローマから日本までの帰路は往路とは一部異なる航海だった。
 スペインのグラナダを経由し、ジブラルタルを過ぎ、メキシコに上陸したのはすでにローマを経ってから半年を過ぎていた。
 大源は、スペインに残してきた藩士の仲間のことも気にはなっていたが、すでに日本ではキリシタン禁令が敷かれ、常長以下が全員洗礼を受けており、日本に帰ってからの処遇がどうなるのかが最大の心配事であった。

 メキシコを陸路アカプルコまで横断する際も、ソテロとはそのことだけが話題になっていた。

 アカプルコからの太平洋横断は貿易風にのり、すでにスペインの植民地となっていたフィリピンを経由して東シナ海を北上するのが当時の一般的な航路だった。
ソテロの口利きでで同乗したスペイン海軍の軍艦は、帆船とはいえ、台風など問題とはしないほど強靭な船体で、順調に太平洋を渡り切った、

 フィリピンから長崎までは、まだ南蛮貿易を続けていた民間船に乗ることができた。問題は、長崎にソテロが上陸できるかであった。船が長崎港に入ると、幕府の役人が乗り込んできた。
やはり、宣教師であるソテロは上陸を拒否され、仙台藩士だけが鹿児島への上陸を許可されのだった。