不連続連載小説 松尾大源(11)2024年06月28日 17:00

 身分を隠す旅ならば当然ではあるが、大源は翌日、名前も告げずに奥州街道を南に旅立っていった。青年の製作した麺は大源の見聞きしたスパゲッティより更に細く、固かった。そして、型崩れせずに短く切ることもできた。簡単に茹でられしかも消化も良かった。青年の親は見る間に回復し、この麺は従来のそうめんに比べて美味しく、調理しやすく、消化にもよいと城下町で評判になっていった。城主小十郎はこの話を主君政宗にも伝えたのである。

 実は政宗の元にもソテロが長崎に戻った知らせは入っていた。その後、大源が 村田を密かに旅立ったことも聞いてはいたが黙認していたのである。政宗が派遣したのに帰ってきて幕府の命令で蟄居させたのだから当然である。

 政宗は小次郎からの知らせを聞き、彼が白石で遣欧使節団としての最後の仕事を成したことを察知したのである。
 そして、小十郎に白石の地産品として広めるよう指示したが、仙台藩一円にも白石温麺(ウーメン)という名で広めたのである。
 現在、仙台駅でも白石ウーメンを食することができるし、各地の百貨店、ネットでも購入ができるほどの人気商品になったのは政宗のこの罪滅ぼしともいえる動きのおかげである。
 
 政宗は実は大変情に厚い人物であり、弟を殺めたというのも戦国武将が天下のためなら身内も手に掛けるという常識に合わせた俗説だったことが現在では明らかになっている。
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