リスクを取らざるを得ない時代の到来2024年07月13日 05:23

 すでの地球は沸騰している。平均気温の上昇が止まらない。

 理由は不明だが、二酸化炭素の排出量増加が一因であることは確からしい。それでも、日本は二酸化炭素を排出し、電気を使って、室内以外の温度を上げ、熱中症を避けるために、電気を作り、二酸化炭素を排出するという無限悪循環に陥った。

 これはお金では解決できない。炭素取引なる概念は、そのために二酸化炭素をより多く排出するだろう。

 ではどうするか。電気を使わない生活、産業が可能か。せいぜい節電だけであろう。

 電気をどうやって効率的に、二酸化炭素を排出せずに作るかーこれが重要な技術であることは多くの日本人は了解しているだろう。具体的な方法は何か。
 
 太陽光か、風力か、はたまた原発か、水素貯蔵か、揚水発電か、それぞれにリスクがあり、メリットがある。

 大きな問題は、二つある。
 電気の安価で大量な貯蔵法がないことである。自然エネルギーの天候任せ、風任せの発電では、夜間のみならず、日中も大規模停電のリスクが大きい。やはり、各々の発電方法のベストミックスなるテレビCMが妥当だと思わざるを得ない。

 今朝のテレ朝で、山口県上関町の原発推進派と反対派の対立をあおるだけの番組が放送されていた。結局は電力の金か、自然保護かという非常に視野の狭い、二者択一の、日本人向けの従来常識に乗って番組のシナリオが出来ている。電波の無駄遣いである。

 このようなマスコミの姿勢とレベルの低さがこの国の将来を危うくしていると感じる。

 まず、やるべきことは事実確認だろう。再生可能エネルギーの各発電方法のリスクとメリット、原発のリスクとメリットを定量評価し、比較するだけでは不足である。

 現在の各発電方式の法規制のベースとなっている各種基準が正しいのか、妥当なのかまで、踏み込まないとリスクとメリットの判断を誤ることになる。

 例えば、太陽光パネルは夜間発電ができないが、蓄電容量が足りなければ、海外から購入すればよい。EUはドイツと原発大国のフランスが電力網で結ばれているので両方のリスクを低減できる構造になっている。日本も大陸と電力網を構築すれば再エネだけでやっていくことも政治リスクを排除できれば可能なのである。現にドイツはそれをある程度やってきたが、ロシアリスクが顕在化してしまって、電力料金の高騰を招き、EVの普及が遅れてしまった。
 例えば、原発の放射能リスクはICRPの被ばく基準を信じて、世界中のマスコミ、電力、住民が賛成、反対の活動をしているが、ICRP被ばく基準そのものを見直すべきだという議論は聞こえてこない。これが原発の議論での最大のリスクである。今朝のテレビ朝日の番組では単に放射能が怖いから反対派、補助金がでるから賛成派という仕分けである。
 いい加減、このようなステロタイプで事態遅れの番組を作るような組織は、リスク評価を勉強しなおして出直してもらいたい。マスコミなら科学部くらいあるだろう。
 要は、地球温暖化リスクと発電核方式のリスク、メリットのバランスを定量的にどう考えるかである。その指標もいろいろあり議論も絶えないが、分かりやすいのは死亡者数だろう。

 この温暖化の結果、身近でも熱中症や体調不良で死亡したものが数名出ている。この死亡原因を、どの発電方式ならどの程度の温暖化抑制効果につながるか、難しくても定量化し、第三者機関(中立的と思われる研究機関)が検討、公表すべきである。また、その際注意しなければならないのは、災害関連死を除外することである。災害関連死といっても、実態は行政機関の怠慢や法律の不備により、災害対応できない弱者が被害を受けて死亡することであり、政治の怠慢を災害に含めてはいけない。その典型的な例は、福島事故で、厚労大臣らの指示でICRP被ばく基準以下のレベルで、必要のない病院の入院患者などをわざわざ放射能の流れる方向に避難させ、ストレスで多くの被災者が死に至ったことである。
 国、マスコミ、各NPOはこのようなリスク比較研究に出資すべきである。

 そして、放射能問題も含めて、死亡リスクを低減するのに最適なベストミックス発電形態化を世に問い、このような番組を作るようなマスコミを軽蔑できるように世論レベルを進歩させる必要がある。