イノシシパラドックスがパラドックスでない理由2025年01月29日 03:24

 欧州にはイノシシパラドックス(Wild bore pradox)なるイノシシ肉に関する話題があって、チェルノビル事故から40年も経つのにイノシシ肉の中のセシウムが減っていないことがおかしいということらしい。

 イノシシはトリフが好物であることもグルメの間では気になっているとのこと。

 セシウムにはよく知られているようにCs-134とCs-137があり、134は半減期2年、137は30年だが、イノシシ肉のセシウムはチェルノビルから40年たっても減少していないというのである。

 しかし、話は単純で、230万年という長半減期のCs-135という核種もある。これを考慮すると途端に話は簡単になる。Cs-135 は核分裂時にはCs-134 やCs-137に比べると4桁程度生成量は小さい。しかし、核分裂でCs-137と同程度の量生成されるキセノンー135(Xe-135)という核種が半減期9時間でベータ崩壊すると、セシウムー135(Cs-135)に変化する。すなわち、Cs-135は時間とともに増加するのである。生成しても半減期が異常に長いので崩壊は無視できる。

 チェルノビルのセシウム以外に、1950~60年代に米ソ冷戦でカザフスタンや太平洋など世界中で大気中核実験が行われ、欧州にもこれらの核種が大量に降り注いだ。従って、Cs-135も大量に生成され、チェルノビルからのCs各各種と混合した結果が、トリフやイノシシ肉に残存しているのである。チェルノビルと核実験のセシウム比率は欧州内でもばらついているが、基本的に長時間後にはCs-135が優位になるのでほぼ一定の平衡状態になる。これがチェルノビルから長時間経ってもセシウムが減少しない理由であり、パラドックスと言われるゆえんでもある。

 しかし、安心してよい。半減期が長いということは、放射能も小さいということである。欧州まで行くジェット機内で浴びる宇宙線の被ばく特に太陽フレア時におけるX線の瞬間被ばく影響に比べれば、現地で食べるトリフやイノシシ肉からの内部被ばくは無視できるほど小さい。(がん発生確率は太陽フレア被ばくより3桁は小さいはずだ。)欧州に行くならば、宇宙からの放射線が大気で遮蔽される客船で半年掛けていく行くほうが健康にもよいだろう。ただしその場合は、船上で紫外線をあまり浴びないように気を付けなければならないが。

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