トルーマンの主目的は日本よりソ連だ2025年07月09日 01:43

原爆投下の目的についてもトランプの誤解は止まらない。

映画オッペンハイマーを見ればよくわかるが、オッペンハイマーの開発したプルトニウム原爆は、米ソ開戦に備えて作ったものである。これは長崎に落とされた。

広島に落とした濃縮ウラン原爆は濃縮工程に時間と手間がかかるので大量生産は不可能である。一方、プルトニウム原爆は化学分離で得られるので、比較的大量に製造できる。

オッペンハイマーが米政府から指示されたのはこのプルトニウム原爆の開発だった。これがないと米ソ冷戦での優位性は保てない。しかし、プルトニウム原爆には物理的に爆発させるのが難しい理由があった。それは爆発に必要な超臨界状態になる前に、プルトニウム同位体の自然崩壊で中性子が発生するため、爆発以前にその中性子の核分裂連鎖反応で熱をある程度発生してしまう。熱膨張すると、原子核の間隔が広がり、その微小な隙間から中性子が体系外に漏洩するので、自動的に未臨界になってしまう。これは現在の原子炉が核爆発しない原理のひとつでもある。

そこで、オッペンハイマーとエドワード・テラーは大量のダイナマイトをプルトニウムの周辺に配置して、同時に圧縮することで、このプルトニウムの自然崩壊による中性子発生が発生するよりも早く、超臨界状態に持っていく技術を開発した。これを爆縮技術と称している。

しかし、この自然崩壊は確率的に生じるため、どこまで早く爆縮すれば超臨界達成が中性子発生よりも早くできるかは、実験しないと確認できない。また、その爆縮速度と自然崩壊の速度の相対関係で、核分裂できるプルトニウム量、即ち、全核爆発エネルギーが決まる。

そのため、テラーを中心に非常に厳密な物理:機械設計を行い、開発した爆縮装置がうまく作動するか1945年7月にネバダ砂漠でプルトニウム原爆の爆発実験を行った。これはトリニティ実験と呼ばれている。だが、困ったことにその核爆発エネルギーの予測精度が不十分で、砂漠周辺に配置した米陸軍兵士には全く影響がなかったのである。(このあたりは映画オッペンハイマーに比較的詳細に描かれており、アインシュタインやロスアラモスの研究者間で予測爆発エネルギーが一桁以上異なっている。)

そこで、米ソ核戦争時の米軍兵士の被ばく影響を確認するには、トリニティをほぼ再現したプルトニウム原爆を作り、これを再実験する必要が出てきた。これが長崎原爆として使われたファットマンと呼ばれる原爆である。爆縮装置が径1メートル以上あり、B-29に何とか収まるサイズになっているのでファットマンなのである。

濃縮ウラン原爆はウランの高濃縮ができれば、プルトニウムのような爆縮問題はないので本体は小さく、リトルボーイと呼ばれたが、ほぼ確実に爆発することは分かっていた。

まず、これを広島に落とし、日本の敗戦を決定づけたが、トルーマンの主目的は対ソ連優位性の確保である。濃縮ウラン原爆を作るには時間がないし、大量生産も不可能である。広大なロシアをつぶすには確実な爆発力を持つプルトニウム原爆が必要だった。広島から日を置かずに、プルトニウム原爆を長崎に落とす理由はここにあったのである。

その結果、日本の無条件降伏を待たずに広島の三日後には長崎に落としたのである。これは人体実験と言えるだろう。

実は長崎原爆の核爆発エネルギーには疑問が出されている。広島・長崎の被ばく生存者の発がんリスクがその後分析され、現在の放射線被ばく基準の基になっているが、そのもととなる放射線発生量の評価は、軍事機密ということで、米国側の専権事項になっている。広島nいある放射線影響研究所の報告書では、長崎原爆の核爆発エネルギーの評価根拠は示されていない。評価結果としてTNT換算21キロトンとなっているが、これはトリニティ実験のTNT換算値20キロトンとほぼ同じ値である。推測するに、同じような値にしなければ、長崎原爆の意味がなく、不安定な原爆であることが示されてしまうので、トルーマンか、オッペンハイマーか或いは関係者のだれかが同じ値にしようと決めたはずだ。

これは単なる推測ではない。広島原爆被ばく生存者の発がんリスクと長崎原爆被ばく生存者の発がんリスクを同じ被ばく線量ごとに比較すると明らかに異なる。(本ブログ2025年1月27日記事等参照)

プルトニウム-239とウラン‐235の核分裂当たりの即発ガンマ線エネルギスペクトルには大きな差はないので、同じ線量なら広島と長崎で発がんリスクに差が出るのはおかしい。即ち、両者の核爆発エネルギ-の評価に意図的な操作がされているとも考えられるのである。

その結果、特に低線量領域では、広島・長崎の被ばく生存者間で、発がんリスクの評価に大きな差が生じてしまう。しかし、統計精度を上げるという名目で、公開されている発がんリスクデータは両市の被ばく生存者を合わせて評価した結果だけである。この結果、長崎の線量評価が(意図的にだろうが)間違っているために、特に低線量領域では不確かさ幅が大きくなり、現在国際放射線委員会(ICRP)が主張しているようなしきい値なし直線モデル(LNTモデル)、即ち、どんな低線量でも発がんリスクがあるというモデルの根拠の一つとなってしまっている。

その結果、福島事故でも災害関連死を生じる結果となり、米国による原爆被害は現在進行形の問題になっている。

トランプがすべきことは、トルーマンを褒めることではなく、米軍総司令官として、長崎原爆の真相を日本側に明らかにすることなのである。

発がんリスクに関する長崎原爆と太陽フレアの微妙な関連2025年07月09日 07:02

長崎被ばく者の発がんリスクは広島被爆者の発がんリスクに比べ同一線量で2倍程度大きいことは1月27日の記事で書いたが、その理由は線量評価だけだろうか。

細胞内の分子は高速で移動している。二河成男「生命分子と細胞の科学」(放送大学出版会)p.173によればグルコースのような小さな分子では1ミリ秒で1μメートルは移動する。

一方、放射線を受けたDNAはP53などの細胞のがん化を防ぐ腫瘍抑制タンパク質により修復される。この修復速度が被ばくした線量率よりも十分早ければがん化は防ぐことができる。

従って、線量が同一でも線量率次第でがん化が生じたり、生じなかったりすることになる。

残念ながら、現在の国際放射線委員会(ICRP)或いは我が国をはじめ多くの規制基準には殆ど線量率に関わる基準はない。低線量なら許容値を2倍にするといった程度である。

しかし、太陽フレアという瞬時被ばく現象がある。これが、米国航空業界のCAのがん発症率を一般人女性の3倍程度に上げているという説がある。(本ブログ2月22日記事参照)

地上に暮らす一般人は太陽フレアの高エネルギーX線を殆ど受けないが、1万メートル以上の航空機に滞在するCAは太陽フレア被ばくを受ける機会が一般人の3倍以上はあるということで説明がつく現象である。

今年は太陽フレアの頻発年であるので、海外旅行ではそのリスクは増加することになる。太陽フレアX線は瞬間的な被ばくなので、時間線量は十分小さいが、線量率は大きい。しかし、残念ながらその正確な測定値は公表されてはいないようだ。

これらの事象を総合して考察すると、長崎の原爆では広島よりも時間線量率が2倍程度大きかった可能性がある。即ち、爆発時間が半分程度に短かったのである。これならば、TNT換算値に線量は比例しても線量率は倍になるので、がん発症率は高くなり、長崎被ばく者のがん発症リスクが、広島被爆者よりも大きい理由付けができる。

広島の放射線影響研究所の報告には、両原爆共に爆発時間は1μ秒以下と書かれているだけで、正確な値は公開されていない。これが発がんリスクに大きく影響することは明らかになってきているのにその最重要データすら軍事機密の闇の中である。

これは、原爆では爆縮した後に中性子発生装置が起動するのであるが
そのメカニズムが微妙すぎるので秘匿されているのだろうとは想像できる。長崎原爆は爆縮機構がついていたが、確実に爆発させるために中性子発生装置の強度が広島よりも強く、瞬間的に爆発した可能性もある。しかし、広島、長崎の時間線量率の区別ができなかった結果、ICRPの基準では線量率が無視されて総被ばく線量だげが発がんリスクのパラメータになってしまった。そして、太陽フレアのような瞬時被ばくだが、線量は小さく測定に掛からないような事象での発がんは見逃されるという状況が現存している。そして、福島のような低線量率長時間被ばくだけが問題にされているのである。

原爆の被ばくも高空での太陽フレア被ばくもX線撮影被ばくも人類が20世紀まで経験もしたことのない高線量率被ばくである。そのような人類が免疫機構を得ていない被ばく形態ではがんリスクも高まることは容易に想像できる。

しかし、インドのケララ地方のように、低線量率だが年間被ばく量が高い地域での発がん率が本当に低いのかといった議論だけが注目されている。

もしかするとX線検査のような高線量率短時間被ばくのほうがCTのような低線量率長時間被ばくよりも発がんリスクは高いのかもしれないが、医療被ばくの評価も結局はICRP基準に基づいており、時間積分線量のみで発がんリスクが議論されているのが悲しい現状である。

これらの議論をはっきり決着させるためにも、トランプは米軍に命令して、TNT換算値だけでなく、両原爆の爆発時間、即ち時間線量率の正確な値も日本側に知らせるべきである。

トランプが広島・長崎の原爆を肯定する発言をするならば、日本政府にはこの要求をする権利と義務があると思う。