第4の被ばくにおける線量差の謎の解明2024年11月21日 06:34

 2024年9月15日放送のNHKスペシャル「第4の被ばく」では、1958年7月14日に海上保安庁調査船拓洋で放射性降下物を受け、、主席機関士が被ばくし、翌年白血病で亡くなった原因は、放射性降下物を洗浄した際の被ばくということになっていた。

 しかし、私の推定では、被ばくの主要因は7月14日ではなく、7月12日の水爆実験からの直接X線被ばくであるというものである。

 番組内で、当時診察したルショール軍医は、拓洋乗組員の白血球減少は500mSv(ミリシーベルト)以上の被ばくによるものだが、拓洋丸の放射線測定結果は0.85mSvでけた違いに小さいと述べたそうだ。
 (本ブログ9月16日)
 一方、同番組内では、主席機関士の残された歯を岡山大学に最近分析依頼を行い、その結果は約140mSvだったので、その原因は放射性降下物の洗浄作業だと推定しているのである。

 明らかに両者は矛盾している。その差の原因は何か。従来使用されてきた、放射線線量計とは一般にガイガーカウンターや、ポケット線量計、フィルムバッジなど、瞬間被ばくに対する応答性が無いものばかりであった。一方、水爆のトリガーとなる原爆の爆発時間は1マイクロ秒以下である。このような瞬間的な被ばくを当時の検出器では検知できなかったのであろう。

 岡山大学の歯の線量測定では、歯の組織変化を9月16日のブログで書いたようにESR法(電子スピン共鳴法)、TL法(熱ルミネッセンス法)、PL法(フォトルミネッセンス法)のどれかで分析したはずだが、これは当時拓洋丸での放射線検出器とは異なるものである。

 最近は、太陽フレアなどの瞬間被ばくX線を測定するために、以下のような特殊な検出器を用いている。
ChatGPTへの質問と回答を以下に示す。
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質問:太陽フレアのインパルシブ相でX線ピークを検出している検出器にはどんなものを使っていますか

ChatGPT:
太陽フレアのインパルシブ相におけるX線ピークの観測には、高感度なX線検出器が使用されています。以下は、主に使用されている検出器や観測機器の例です。
1. GOES衛星のX線センサー (XRS)
アメリカの気象衛星GOESシリーズには、ソフトX線を測定するセンサー(XRS)が搭載されています。
エネルギー帯域: 0.5–4 Å (ハードX線) と 1–8 Å (ソフトX線) の2チャンネル。
太陽フレアの発生をリアルタイムでモニタリングし、フレアの強度分類(A、B、C、M、Xクラス)を提供します。

2. RHESSI (Reuven Ramaty High Energy Solar Spectroscopic Imager)
高エネルギーX線やガンマ線を観測するために設計された衛星。
エネルギー帯域: 3 keVから17 MeV。
主に太陽フレア中の非熱的な高エネルギー電子の放射を観測しますが、インパルシブ相でのX線ピーク検出にも貢献しました。
現在は運用終了(2002–2018)。

3. Hinode (Solar-B) 衛星
日本が主導する太陽観測衛星Hinodeには、X線望遠鏡(XRT)が搭載されています。
高温のプラズマ(数百万K)からのX線放射を撮像。
X線ピークの空間分布や時間変化を詳細に観測できます。

4. NuSTAR (Nuclear Spectroscopic Telescope Array)
本来は高エネルギー宇宙物理学のための観測機器ですが、太陽観測にも使用されています。
エネルギー帯域: 3–79 keV。
太陽フレアの高エネルギー部分や非熱的放射を観測することが可能です。

5. STIX (Spectrometer/Telescope for Imaging X-rays)
欧州宇宙機関(ESA)の太陽探査機Solar Orbiterに搭載されているX線分光撮像装置。
エネルギー帯域: 4–150 keV。
太陽フレアのインパルシブ相で放射されるX線のエネルギースペクトルとタイミング情報を高精度で取得します。

6. 地上設置型観測装置
地上観測では、太陽X線を直接観測するのは困難ですが、リオメーターや他の間接手法でフレアのインパルシブ相の影響を観測する場合があります。

これらの検出器を組み合わせることで、太陽フレアのインパルシブ相の詳細なX線ピークを解析することが可能です。それぞれの装置には、エネルギー帯域、時間分解能、空間分解能に特徴があり、観測の目的や研究対象によって選ばれます。
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このような当時存在しなかった検出器が拓洋に備えてあったなら、1958年7月12日の水爆実験ポプラでの瞬間被ばくがとらえられていただろう。それは岡山大学の歯による線量評価値140mSvレベルの高線量であったはずである。
 NHKはそれが1958年7月14日の放射性降下物洗浄による被ばくと推定していたが、その線量は、ルショール軍医が話したように、0.85mSvという拓洋の測定レベルのはずで、これでは白血球減少は生じない。

 即ち、7月12日の水爆実験当日に大量の瞬間被ばくを受け、2日後の7月14日には乗組員の多くの白血球が減少した。白血球の減少まで委は被ばく後2~3日は必要である。この被ばくにより運悪く主席機関士は翌年白血病を発症したというのが事実であろう。他の多くの乗組員は白血病に罹ることなく回復している。

 上記のように、水爆と同様核融合反応が原因の太陽フレアの被ばくは現在も地球上では検出が困難である。しかし、大気の遮へいの無い航空機では太陽フレアのインパルシブ相でのX線被ばくは起こりうる。これがCAの乳がん、白血病多発の原因と思われるが、乗客も同じように運悪く太陽フレアの被ばくをうけると同様にがんや白血病になりうる。今年から太陽フレアの活動期にはいった。X線は光速なので予防は不可能である。これを留意して海外旅行を行うべきだろう。

 放射線被ばく防護基準もこのような事象を考慮して改訂すべきだ。自然現象の太陽フレアは規制対象外だという議論も見かけたが、ジェット機搭乗は自然現象ではないはずだ。

 ただ、自然現象を外したくなる気持ちは分かる。地球上には年間30mSvという、現在の一般人規制の30倍で、職業人規制20mSvを超える地域に1000万人以上が住んでいる。これとの整合性が無くなるのである。
 従って、線量規制だけでなく、実際には発がん性が強い、瞬間被ばく規制、即ち高時間線量率との組み合わせによる規制が必要になるが、実現はしていない。