放影研がLSSデータを一部非公開にしたワケは2024年08月31日 04:45

 がんが放射線被ばくとともに喫煙によっても引き起こされることはよく知られている。

 知り合いにも40年喫煙して大腸がんに罹患した者がいるし、音楽家坂本龍一氏が30年以上喫煙して大腸がん、肺がんに罹患したようだ。
https://openers.jp/lounge/5203

 では、喫煙効果と放射線被ばく効果が分離できるのか、坂本氏も本心では知りたかったであろう。実はそのデータは存在している。

 それは、広島の放射線影響研究所が、昨年、非公開にしたLSS-14(Life Span Study-14)での2009年までの被ばく者調査データ(以下2009年データと称する)である。このデータは被ばく者及び比較対象の非被ばく者の喫煙習慣データも含むがん発生データである。これが昨年非公開になった。それまでは、下記サイトにある1998年までの同様データがあり、これは今も公開されている。但し、この1998年までのデータ(1998年データと称する)には喫煙習慣データが含まれていない。即ち、不完全なデータなのである。

 なぜ、喫煙習慣データが含まれる2009年データを非公開にしたのか。表向きは個人情報との関係であるということになっているようだが、1998年データも喫煙以外のデータは個人データ(年齢、被ばく時位置、被ばく線量、発がんデータ等)は含まれている。(もちろん個人名は含まれていないが)

 推測するに、2009年データを使うと喫煙による発がんデータが分離できるので、被ばく線量と発がんの関係が明確になってしまうことが問題となったと思う。即ち、1998年データでは被ばくによるがん発生数に加えて、喫煙による発がん数が下駄分として含まれるが後者が分離できないために、発がんすべてが放射線被ばくによる影響としてカウントされるのである。この結果、低線量被ばくでもがん発生があるという解析結果になってしまう。

 一方、2009年データを用いれば、喫煙効果を除外できるので、低線量では放射線被ばくによるがん発生は生じないというデータが得られる。
 http://yokoyamashindo.asablo.jp/blog/2024/08/07/9707438


 これは、国際放射線防護委員会(ICRP)が主張し、各国の規制当局が採用しているLNT仮説(直線しきい値なし、低線量被ばくでも発がんリスクはあるという仮説)を否定するデータである。

 、ICRPは主に広島・長崎の被爆者データを根拠としてLNT仮説を主張しているのだから、最近の統計処理技術の高度化による上記のようなデータが明らかになるのは、困るのであろう。

 だが、本当に困るのは一般国民である。1998年データは公開し、一方、個人情報保護などという名目で2009年データは非公開にするというのは明らかに無理な論理である。すべて元のように公開すべきであろう。