原爆被爆者の非喫煙者と喫煙者のがん発症リスク比較 ― 2024年09月03日 16:04
下記の表は、以前放射線影響研究所(放影研)より公開されていた各市毎の原爆男性生存者を対象に、被ばく線量と固形がん発生率の関係を統計解析コードRにより解析したものである。
この解析では5mGy以下の被ばく者を被ばくの影響がなかったベースラインと仮定して、被ばく線量範囲の上限を20mGy~3400mGyまで拡大した場合のERR(Excess Relative Risk、即ち、がん発生率の相対値から1.0を引いたもの)を解析した。喫煙によるがん発症リスクと原爆における放射線被ばくによるがん発症リスクの比較のために、広島・長崎の被ばく者データがそろっている放影研の2009年データ公開を対象に、男性非喫煙者のみの場合と、非喫煙者、喫煙者、喫煙経験不明者を含む全男性の場合の固形がん発生リスクを、統計ソフトRにより比較した。
結果は下記に示すとおりである。
この表で、ERR/Gyとは、ExcessRelativeRisk/Gyの略であり、RelativeRisk(被ばくしていない者のがん発症リスクを1とした場合のリスクを1とした場合に対する超過分) を単位線量(1Gy)被ばくに換算して表示した値である。例えば、5~20mGyの範囲で被ばくした人々のがん発症リスクは、被ばくしていない人(5mSv以下を想定)に対し、単位線量の被ばく当たり-4.06倍となる。
マイナスは被ばくすることによりがんが被ばくしていない人よりもがんになりにくいということなる。
マイナス値のERRは、直感的には理解しにくいが、仮に平均がん発生率が1Gy当たり0.3回であれば、統計処理で得られた値は1Gy当たり‐1.2回という発生率になっているということである。
一方、全男性は喫煙者を含んでいるので5~20mGy被ばくした人々のがん発症リスクが6倍程度大きいということを示している。
非喫煙者の場合は、300mGy程度までの被ばく範囲でがん発症リスクは被ばくしていない人よりも小さいことを示す。
一方、喫煙者を含む全男性では、一部の線量範囲を除きすべて正になっている。即ち、被ばくしている、していないに関わらず、がん発症リスクが増加している。これは、喫煙効果によるがん発症を分離せず、すべてが放射線被ばくによるものと仮定した解析だからである。
(全男性の場合でも一部、マイナス値のERRが生じているがこの範囲での解析精度(p値)は0.05より大きく信頼性はないことを示している。)
両市の男性被ばく生存者の固形がん発症リスクとERR線量偏回帰係数の関係
線量範囲 ERR線量偏回帰係数 解析精度
(mGy) ERR /Gy p-values
非喫煙者 全男性 非喫煙者 全男性
5ー20 -4.0865 6.4615 0.2782 0.0466
5-40 -5.8541 -0.7423 0.0002 0.5940
5-60 -1.4084 1.2003 0.1763 0.1850
5-80 -1.1919 0.6970 0.1215 0.2980
5-100 -0.5038 1.0631 0.4326 0.0549
5-125 -0.5271 0.5513 0.3089 0.2150
5-150 -0.8928 -0.0217 0.0352 0.9530
5-175 -0.8011 0.0262 0.0305 0.9350
5-200 -0.4151 0.1673 0.2189 0.5620
5-250 -0.4843 0.0778 0.0760 0.7410
5-300 -0.0366 0.3338 0.8770 0.0989
5-500 0.1260 0.2511 0.4230 0.0556
5-750 0.2421 0.3008 0.0386 0.0020
5-1000 0.3572 0.3623 0.0002 0.0000
5-1250 0.3920 0.3900 0.0000 0.0000
5-1500 0.3285 0.3300 0.0000 0.0000
5-1750 0.3817 0.3769 0.0000 0.0000
5-2000 0.4113 0.4081 0.0000 0.0000
5-2500 0.4222 0.4208 0.0000 0.0000
5-3000 0.4181 0.4063 0.0000 0.0000
5-3400 0.4256 0.4128 0.0000 0.0000
これが、国際放射線防護委員会(ICRP)が主張し、各国の規制当局が採用しているLNT仮説(直線しきい値なし、低線量被ばくでも発がんリスクはあるという仮説)を否定するデータの重要な例である。
放影研はこの2009年データを用いて下記の論文を公開しているが、その基礎となる疫学データを昨年非公開にした。これは、まるで以前神戸の理研で起こったような論文は出したが、その基礎データは再現できなかったような事態と同様でる。
https://bioone.org/journals/radiation-research/volume-187/issue-5/RR14492.1/Solid-Cancer-Incidence-among-the-Life-Span-Study-of-Atomic/10.1667/RR14492.1.full
なぜなら、この論文は検証のしようがない、ブラックボックス的論文になってしまったからである。
(なお、同じ元データによる上記の表の、第三者による検証も同様にできないのではある。)
だが、本当に困るのは一般国民である。1998年データは公開し、一方、個人情報保護などという名目で2009年データは非公開にするというのは明らかに無理な論理である。放影研には日米政府が半分ずつ予算を提供しているようである。税金の無駄遣いを防ぐうえでも早く再公開してもらいたい。
この解析では5mGy以下の被ばく者を被ばくの影響がなかったベースラインと仮定して、被ばく線量範囲の上限を20mGy~3400mGyまで拡大した場合のERR(Excess Relative Risk、即ち、がん発生率の相対値から1.0を引いたもの)を解析した。喫煙によるがん発症リスクと原爆における放射線被ばくによるがん発症リスクの比較のために、広島・長崎の被ばく者データがそろっている放影研の2009年データ公開を対象に、男性非喫煙者のみの場合と、非喫煙者、喫煙者、喫煙経験不明者を含む全男性の場合の固形がん発生リスクを、統計ソフトRにより比較した。
結果は下記に示すとおりである。
この表で、ERR/Gyとは、ExcessRelativeRisk/Gyの略であり、RelativeRisk(被ばくしていない者のがん発症リスクを1とした場合のリスクを1とした場合に対する超過分) を単位線量(1Gy)被ばくに換算して表示した値である。例えば、5~20mGyの範囲で被ばくした人々のがん発症リスクは、被ばくしていない人(5mSv以下を想定)に対し、単位線量の被ばく当たり-4.06倍となる。
マイナスは被ばくすることによりがんが被ばくしていない人よりもがんになりにくいということなる。
マイナス値のERRは、直感的には理解しにくいが、仮に平均がん発生率が1Gy当たり0.3回であれば、統計処理で得られた値は1Gy当たり‐1.2回という発生率になっているということである。
一方、全男性は喫煙者を含んでいるので5~20mGy被ばくした人々のがん発症リスクが6倍程度大きいということを示している。
非喫煙者の場合は、300mGy程度までの被ばく範囲でがん発症リスクは被ばくしていない人よりも小さいことを示す。
一方、喫煙者を含む全男性では、一部の線量範囲を除きすべて正になっている。即ち、被ばくしている、していないに関わらず、がん発症リスクが増加している。これは、喫煙効果によるがん発症を分離せず、すべてが放射線被ばくによるものと仮定した解析だからである。
(全男性の場合でも一部、マイナス値のERRが生じているがこの範囲での解析精度(p値)は0.05より大きく信頼性はないことを示している。)
両市の男性被ばく生存者の固形がん発症リスクとERR線量偏回帰係数の関係
線量範囲 ERR線量偏回帰係数 解析精度
(mGy) ERR /Gy p-values
非喫煙者 全男性 非喫煙者 全男性
5ー20 -4.0865 6.4615 0.2782 0.0466
5-40 -5.8541 -0.7423 0.0002 0.5940
5-60 -1.4084 1.2003 0.1763 0.1850
5-80 -1.1919 0.6970 0.1215 0.2980
5-100 -0.5038 1.0631 0.4326 0.0549
5-125 -0.5271 0.5513 0.3089 0.2150
5-150 -0.8928 -0.0217 0.0352 0.9530
5-175 -0.8011 0.0262 0.0305 0.9350
5-200 -0.4151 0.1673 0.2189 0.5620
5-250 -0.4843 0.0778 0.0760 0.7410
5-300 -0.0366 0.3338 0.8770 0.0989
5-500 0.1260 0.2511 0.4230 0.0556
5-750 0.2421 0.3008 0.0386 0.0020
5-1000 0.3572 0.3623 0.0002 0.0000
5-1250 0.3920 0.3900 0.0000 0.0000
5-1500 0.3285 0.3300 0.0000 0.0000
5-1750 0.3817 0.3769 0.0000 0.0000
5-2000 0.4113 0.4081 0.0000 0.0000
5-2500 0.4222 0.4208 0.0000 0.0000
5-3000 0.4181 0.4063 0.0000 0.0000
5-3400 0.4256 0.4128 0.0000 0.0000
これが、国際放射線防護委員会(ICRP)が主張し、各国の規制当局が採用しているLNT仮説(直線しきい値なし、低線量被ばくでも発がんリスクはあるという仮説)を否定するデータの重要な例である。
放影研はこの2009年データを用いて下記の論文を公開しているが、その基礎となる疫学データを昨年非公開にした。これは、まるで以前神戸の理研で起こったような論文は出したが、その基礎データは再現できなかったような事態と同様でる。
https://bioone.org/journals/radiation-research/volume-187/issue-5/RR14492.1/Solid-Cancer-Incidence-among-the-Life-Span-Study-of-Atomic/10.1667/RR14492.1.full
なぜなら、この論文は検証のしようがない、ブラックボックス的論文になってしまったからである。
(なお、同じ元データによる上記の表の、第三者による検証も同様にできないのではある。)
だが、本当に困るのは一般国民である。1998年データは公開し、一方、個人情報保護などという名目で2009年データは非公開にするというのは明らかに無理な論理である。放影研には日米政府が半分ずつ予算を提供しているようである。税金の無駄遣いを防ぐうえでも早く再公開してもらいたい。
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