放射線によるヒト細胞の新陳代謝活性化条件2023年08月15日 05:18

 ある大学OB会誌に紹介されていた下記論文にはある意味で驚くべき結果が示されている。

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0199117

この論文での結果には、
「低線量 によって引き起こされる遺伝子発現の変化を調べるために、0.1 Gy の X 線に曝露し、その後 24 時間培養したヒトの U937 細胞のマイクロアレイ分析を実施した結果、試験管内のU937細胞におけるCARD9、HIST1H2BH、およびmir4497遺伝子の発現が増加(1.8倍以上の変化)する一方、減少を示す遺伝子は存在しなかった。」
と記載されている。
これらのヒト遺伝子(CARD9、HIST1H2BH、およびmir4497遺伝子)がタンパク質活性化に関わるものだそうで、新陳代謝の活性化のためのものである。

 この0.1Gy(100mGy)という放射線量は、一般人のガンマ線被ばく制限規制値1mSv/年の100倍、福島立ち入り制限地区設定値の20mSv/年の5倍である。
 (Gy値とSv値はガンマ線、X線では同じ値となる。ガンマ線は放射性物質からの放射線、X線は加速器などからの放射線であるが同じ電磁波である。)
即ち、一般人制限値の100倍被ばくしたほうが新陳代謝は活性化するということになる。

 この論文での照射した時間条件など詳細は不明だが、1年はかけていないだろう。即ち、がん治療などと同様の数時間程度の短時間照射による結果である。

 一方、福島など現規制値の元となっているICRP(国際放射線防護委員会)の基準値は、広島・長崎の原爆被ばく者の健康データから設定しているが、低線量領域(200mGy以下)での放射線影響は明確になっておらず、300mGy以上の高線量被ばく者データを単に0に外挿した値を用いているに過ぎない。

 原爆でのガンマ線照射時間は1ミリ秒以下の瞬間被ばくである。このような瞬間被ばくでの影響と数時間又は1年間のゆっくりした被ばくを同一視して設定していることに大きな問題がある。

 上記論文の研究者には被ばく時間を数秒レベルにした場合での影響の検討もしてもらいたいものである。

 なお、8月8日午後のTBSーBSの放送で「原爆直後に広島に入ったKGBの職員が放射線障害で死んだ旨ロシアの歴史学者がコメントした」そうだが、2022年8月9日 18時10分の朝日新聞デジタルの記事では、「最初にソ連のスパイ2人が広島、長崎に入ったのは1945年8月16、17日だ。日本の敗戦が発表された翌日で、原爆を投下した米国の調査団よりはるかに早い時期だった。
 うち1人は被爆地で残留放射線を浴びたためか、急死した。2人は報告書を当時のソ連の最高指導者スターリンらに上げたとされるが、現在は所在不明だ。」
 となっていて、死亡原因は不明である。おまけに他の一人は死んではいなかったということになる。
 このようにTBSは事実誤認したらしい歴史学者のコメントで、放射線影響の誤報を行ったのではないだろうか。朝日ですら正確に記載しているのに。
 これも瞬間被ばくと長時間被ばくの影響を混同しているためだろう。彼らはアルコールの一気飲みと通常の飲酒の影響の区別も同様につかないのかもしれない。

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