核共有が危険なワケ2024年10月13日 01:53

 ノーベル平和賞を受賞した被団協の代表が石破首相に核共有をしないように釘を刺したそうだが、それは軍事的な安全保障の考え方の差によるものだろう。

 しかし、ここで核共有が危険だと主張するのは全く別の理由からである。

 核共有とは日本が核兵器を部分的であれ管理する事を意味する。そんな能力は日本側にはない。

 その証拠に未だに広島・長崎の被ばく線量評価の最重要点である放射線線源評価が米国側の担当で、日本側は結果のみ教えられる立場だからである。

 日本側には核兵器の原理・メカニズムが管理できるほど良く知っている者が居ないからそうなるのである。もし、そのような担当者が居れば、共有などする必要もない。自分で作れるはずである。しかし、軍事機密の壁を破るのは簡単ではない。米軍もそれを日本側にに教える必要性も義務もない。

 しかし、核共有をした場合、核兵器を管理する責任が生じるのであり、その機微なメカニズムを理解していないと大変な災害を引き起こす。原爆は原子炉と異なり、自己制御性が無いのは核物理のイロハである。

 福島事故でも、炉心は核爆発はしていない。放射能の徐熱失敗による 炉心熱溶融と化学反応で発生した水素爆発のみである。一方、原爆は質量管理、温度管理を適切に維持しないと不完全爆発(fizzle expulsion)を生じることがある。

 例えば、福島事故発生直後に米国NRC(原子力規制委員会)は、本国内での放射線量が急激に変化した場合を想定して、米国市民に50マイル以内に近づくなと警告した。NRCが特に問題にしたのは、原子炉ではなく、格納容器の外に置かれた使用済み燃料貯蔵プールだった。

 中性子吸収材を燃料の間に挿入することで、当初より多くの燃料を貯蔵できるように日本で設計変更されていた。これは核爆弾ではないので爆発はしないが、中性子吸収材が落下することにより超臨界となり、発熱が急激に増加する可能性がある。当時、福島第一原発では、使用済み核燃料が溜まり過ぎて、仕方なく設計変更をしていた。NRCは、地震により、この中性子吸収材が落下落下する可能性を問題にし、MIT(マサチューセッツ工科大学)に急遽、解析依頼をしていた。その結果がこの警告なのである。

 当時NHKの特番で原子炉と使用済み燃料貯蔵プールの健全性の両方が議論になっていたが、ある大学教授が使用済み燃料貯蔵プールはじゃんじゃん注水して冷やしさえすればいいのだという趣旨の発言をした。中性子吸収材が破損した状態で温度が下がると燃料が核分裂反応しやすくなり、発熱量が逆に上昇する恐れが生じる。そこで、慌ててNHKに電話を入れ、発言を訂正するよう申し入れたが、NHKの回答は、その発言はコメンテイターの責任であり、NHKには訂正する気はないというものであった。

 それ以来、マスコミの情報は信用しないことにしたのである。

 核共有における原爆管理では、放射能拡散のような長期的影響の問題以前に、管理失敗による爆発の可能性がある。それを素人集団の日本側が部分的にでも行ったら、戦争以前の安全上の問題が生じることになる。こちらは原子炉の水素爆発などとは桁違いの核爆発を生じるのである。

 これが核共有が危険であるということの最大の理由である。

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