北朝鮮での新しい原子炉臨界の意味2023年12月22日 19:51

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6485839

によれば、寧辺核施設の新しい軽水炉から温水が排出されているとのことで、これがプルトニウム生産炉となっているらしい。

 ここで、この軽水炉が何なのかという問題がある。単に温水が排出されているだけなら、これは発電炉即ち原発ではない。

 原発とプルトニウム生産炉には大きな相違がある。これをマスコミも評論家も誤解している。

 プルトニウムとは、原爆の材料であるプルトニウムと、原爆の材料にはならないプルトニウムの2種類がある。その相違は、米国エネルギー省の定義にあるように、プルトニウム同位体組成比の差にある。プルトニウム原子核には含まれる中性子の数によりいくつかの同位体がある。

 簡単に言えば、プルトニウム-239が98%以上でないと爆発しない。それは、残りの大部分を占めるプルトニウムー239が自発核分裂を起こす性質があるためである。原爆の原理は、十分に臨界超過になるようにプルトニウムを圧縮してから、中性子を投入することで、大きな爆発力を生じる。しかし、プルトニウムー240がプルトニウムの圧縮過程で自発核分裂を起こすと、臨界になる前に大量の核分裂が生じてしまうので、その熱により膨張して、未臨界になり、爆発が不完全になるためである。もちろん、これは確率の問題であるが、この確率をほぼ0%にするには、プルトニウムー239を98%以上にしないといけない。このために、原子炉内でウランから発生するプルトニウムー239をすぐに取り出さなければならない。

 通常の発電用原発でもプルトニウム-239は発生するが、発電を数日続けるだけで240に変換されてしまう。数か月運転するだけでプルトニウムー240比率は5%以上になってしまうので、原爆の材料にすることは困難である。この発電用原発と原爆用プルトニウム生産炉の相違をもう少し、マスコミや評論家は認識する必要があるだろう。

 数年前に、米国ロスアラモスが開発したプルトニウム-240比率が5%程度でも爆発可能な装置を金正恩が手にしている写真が報道されたが、今も日本などで用いられている発電用軽水炉の使用済み燃料のプルトニウム(プルトニウム-240組成比約20%)では、北朝鮮をもってしても原爆は作れないということである。