不連続連載小説 松尾大源(3)2024年02月16日 11:37

 同じ頃、政宗も伊達藩の統治について悩んでいた。家康とは関ケ原以来の支援と縁戚関係の強化で、信頼関係を結んでいたとはいえ、あとを継いだ秀忠との関係は弱く、頼りのソテロの希望だったキリスト教は禁令が出されることになった。
 政宗の目論見としては、キリスト教の布教を許容する代わりに、スペイン及び欧州各国と交易をおこない、伊達藩の隆盛を図ることではあったが、幕府がキリスト教禁令と鎖国政策を進めるのを止めるだけの力はなかった。
 伊達藩北部の金成などでは、多くの金山があり、伊達藩の対外貿易における資金力の元ともなっていた。しかし、その生産は地元の農家の手掘りや砂金の回収に頼っていた。
 漫画家石ノ森章太郎の出身地、石ノ森には、金を領主に大量に起草した農家が、金(コン)という名字を送られたとの話もある。作家井上ひさしは、宮城県北部の金資源をもとに、日本から独立を企てた吉里吉里国を想定してSF小説を書いている。
 しかし、そのような農民の乱掘のため、金の産出量も先細りとなっていった。大規模な鉱山開発技術に対する欧州からの技術導入も遣欧使節団の派遣の狙いでもあった。
 秀忠の時代に幕府が鎖国政策を進めた一因として、伊達藩の巨大化を抑える狙いがあったのである。政宗亡き後起こった伊達騒動の主役である伊達安芸も伊達兵部もこれら伊達藩北部の領主であった。幕府は伊達藩の内部分裂を煽って、弱体化するような陰謀を図っていたともいえる。
 政宗もまた、幕府の鎖国政策、キリスト禁令がどうなるか、伊達藩の行く末を決めるものとして心から心配していたのだった。