被ばく量とがん発生率の相関関係の謎 ― 2023年06月11日 16:10
二つの放射線被ばく量とがん発生率に関する論文がある。
一つは英国原子力作業従事者のがん発生率に関する論文で
https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&ved=2ahUKEwi72KCkjbL_AhWB0mEKHUPHDlAQFnoECA0QAQ&url=https%3A%2F%2Fwww.rea.or.jp%2Fwakaruhon%2Fhonbun%2FNo12honbun.pdf&usg=AOvVaw1YAUV1yMHamGbobK562fDZ
まとめとして、
「英国では原子力施設で働く放射線業務従事者について、死亡原因
と放射線被ばくの関係を調べるための調査を行っています。(この
ような統計的調査を一般に疫学調査といいます)放射線業務従事者
約10万人を調査対象としており、1945年から1988年まで
の調査では調査対象者の平均線量は33.6ミリシーベルトでした
が、「がん」および「がん以外の病気」による死亡率はいずれも英国
国民平均に比べて15%以上低い値でした。」
と記載されている。
即ち、自然からの被ばく線量2.1ミリシーベルト(日本の場合)を考慮すると、
英国では、日本の自然放射線の15倍程度の人口放射線を浴びた原子力業務従事者のがん発生率が一般人より15%低くなるという統計データがあるということになる。
ふたつ目の論文は、米国の航空機客室乗務員に関する調査で、
https://www.arpansa.gov.au/cancer-prevalence-among-flight-attendants-compared-general-population
客室乗務員の年間電離放射線量は3.07ミリシーベルトで、乳がん、子宮頸がんの有病率は一般人の約1.5倍となっている。
即ち、英国のデータでは、年間約34ミリシーベルト浴びるとがんによる死亡率は15%減るが、米国のデータでは、年間約3ミリシーベルト浴びるとがんは約1.5倍増えるということになる。地上の自然放射線は約2ミリシーベルトだから、ちょっと浴びるよりも15倍浴びたほうが健康によいというデータに見える。
この関係は一種の謎であり、その理由は両論文では明らかにはされていない。
このような一見矛盾した統計データが出てくる原因についての、私の推定は以下のとおりである。
それは、日本国政府も採用している基準である、国際放射線防護委員会(ICRP)の被ばく基準の設定に問題があるということである。
ICRPの基準は、広島・長崎の生存者におけるがん発生率に基づき、原爆の被ばく線量とがん発生率に比例関係があると仮定している。
この仮定のもと、自然被ばく線量の地域的揺らぎの範囲内として、一般人の被ばく許容線量を年間1ミリシーベルトとし、また、原子力作業従事者は職業であることから年間50ミリシーベルトにしている。
しかし、広島・長崎の原爆は爆発の時間である約1ミリ秒で浴びた瞬間的な被ばく事象による放射線量であり、年間(365×24×3600×1000ミリ秒)における被ばく線量ではない。
一方、客室乗務員は年間5回程度発生する太陽フレア(太陽表面の短時間核融合反応増大現象)による被ばくを浴びる。これはガンマ線も含まれ、それは秒単位で浴びる瞬間被ばくとなる。
上記、原子力作業者の1秒当たりの被ばく量は、
年間被ばく労働時間を約1000時間と想定した場合、総計34ミリシーベルト浴びるので
34/(1000*3600)=9.4×10のマイナス6乗ミリシーベルト/秒
となる。
一方、上記、客室乗務員の1秒当たりの被ばく量は、
太陽フレアが年5回発生、被ばく時間が1秒とすると、客室乗務員の単位時間当たり被ばく量は
3/5=6×10のマイナス1乗ミリシーベルト/秒
となる。
即ち、客室乗務員は5桁も大きな瞬間被ばくを受けている。即ち、広島・長崎の被ばく者に近い被ばく形態なのである。
このパラドックスは、1.8リットルの醤油を1年間でゆっくり飲めば健康に良いが、一気飲みをすれば重大な健康被害があるという議論に似ている。
生物学的には、がん抑制遺伝子が機能し、ゲノム損傷を修復するためには有限の時間が必要なのである。瞬間の大量被ばくではがん抑制遺伝子が十分機能できないのではないだろうか。
何故なら、原爆も高空での太陽フレアも、生物の進化の歴史でこれまで経験したことのない被ばく形態なのである。免疫機能であるがん抑制遺伝子が働く可能性は小さい。
このように瞬間被ばくのデータをもとに長時間の被ばくの影響を単に時間積分総線量のみで規定するICRPの基準自体に大きな欠陥があると考える。
念のために言うと、客室乗務員だけでなく、国際線で高空を飛行する一般乗客も同じ被ばくを受けるのである。
2025年は太陽フレアの活動が活発化すると言われている。
早めにこの問題の対策を行い、太陽フレアによる瞬間被ばくによるがん発生増加を抑制しなければならない。しかし、太陽フレアからのガンマ線は光と同じ速度で地球の大気上層に到達するのだから、今のパイロット並みの対策しかないのかもしれない。
(太陽フレアが発生したときに乗務していたことが分かったパイロットはしばらく乗務を停止する勤務調整をしているそうである。)
このままでは、がん発生のリスクに関し、最も危ないのは客室乗務員と頻回の一般利用客だけということになるのかもしれない。
6月13日追記
ではなぜ一般人より被ばく量の多い原子力従事者のがんが少ないか、という理由だが、これには2つの理由が考えられる。
ひとつは、ある程度、放射線を浴びている事で、がん抑制遺伝子の活動が活発化し、免疫機能が向上することである。
もう一つは、紫外線消毒と同様、ガンマ線を浴びることで、体内外の細菌が死滅し免疫機能に余裕ができて、前癌状態に対する応答に対応することが容易になると考えられることである。
一つは英国原子力作業従事者のがん発生率に関する論文で
https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&ved=2ahUKEwi72KCkjbL_AhWB0mEKHUPHDlAQFnoECA0QAQ&url=https%3A%2F%2Fwww.rea.or.jp%2Fwakaruhon%2Fhonbun%2FNo12honbun.pdf&usg=AOvVaw1YAUV1yMHamGbobK562fDZ
まとめとして、
「英国では原子力施設で働く放射線業務従事者について、死亡原因
と放射線被ばくの関係を調べるための調査を行っています。(この
ような統計的調査を一般に疫学調査といいます)放射線業務従事者
約10万人を調査対象としており、1945年から1988年まで
の調査では調査対象者の平均線量は33.6ミリシーベルトでした
が、「がん」および「がん以外の病気」による死亡率はいずれも英国
国民平均に比べて15%以上低い値でした。」
と記載されている。
即ち、自然からの被ばく線量2.1ミリシーベルト(日本の場合)を考慮すると、
英国では、日本の自然放射線の15倍程度の人口放射線を浴びた原子力業務従事者のがん発生率が一般人より15%低くなるという統計データがあるということになる。
ふたつ目の論文は、米国の航空機客室乗務員に関する調査で、
https://www.arpansa.gov.au/cancer-prevalence-among-flight-attendants-compared-general-population
客室乗務員の年間電離放射線量は3.07ミリシーベルトで、乳がん、子宮頸がんの有病率は一般人の約1.5倍となっている。
即ち、英国のデータでは、年間約34ミリシーベルト浴びるとがんによる死亡率は15%減るが、米国のデータでは、年間約3ミリシーベルト浴びるとがんは約1.5倍増えるということになる。地上の自然放射線は約2ミリシーベルトだから、ちょっと浴びるよりも15倍浴びたほうが健康によいというデータに見える。
この関係は一種の謎であり、その理由は両論文では明らかにはされていない。
このような一見矛盾した統計データが出てくる原因についての、私の推定は以下のとおりである。
それは、日本国政府も採用している基準である、国際放射線防護委員会(ICRP)の被ばく基準の設定に問題があるということである。
ICRPの基準は、広島・長崎の生存者におけるがん発生率に基づき、原爆の被ばく線量とがん発生率に比例関係があると仮定している。
この仮定のもと、自然被ばく線量の地域的揺らぎの範囲内として、一般人の被ばく許容線量を年間1ミリシーベルトとし、また、原子力作業従事者は職業であることから年間50ミリシーベルトにしている。
しかし、広島・長崎の原爆は爆発の時間である約1ミリ秒で浴びた瞬間的な被ばく事象による放射線量であり、年間(365×24×3600×1000ミリ秒)における被ばく線量ではない。
一方、客室乗務員は年間5回程度発生する太陽フレア(太陽表面の短時間核融合反応増大現象)による被ばくを浴びる。これはガンマ線も含まれ、それは秒単位で浴びる瞬間被ばくとなる。
上記、原子力作業者の1秒当たりの被ばく量は、
年間被ばく労働時間を約1000時間と想定した場合、総計34ミリシーベルト浴びるので
34/(1000*3600)=9.4×10のマイナス6乗ミリシーベルト/秒
となる。
一方、上記、客室乗務員の1秒当たりの被ばく量は、
太陽フレアが年5回発生、被ばく時間が1秒とすると、客室乗務員の単位時間当たり被ばく量は
3/5=6×10のマイナス1乗ミリシーベルト/秒
となる。
即ち、客室乗務員は5桁も大きな瞬間被ばくを受けている。即ち、広島・長崎の被ばく者に近い被ばく形態なのである。
このパラドックスは、1.8リットルの醤油を1年間でゆっくり飲めば健康に良いが、一気飲みをすれば重大な健康被害があるという議論に似ている。
生物学的には、がん抑制遺伝子が機能し、ゲノム損傷を修復するためには有限の時間が必要なのである。瞬間の大量被ばくではがん抑制遺伝子が十分機能できないのではないだろうか。
何故なら、原爆も高空での太陽フレアも、生物の進化の歴史でこれまで経験したことのない被ばく形態なのである。免疫機能であるがん抑制遺伝子が働く可能性は小さい。
このように瞬間被ばくのデータをもとに長時間の被ばくの影響を単に時間積分総線量のみで規定するICRPの基準自体に大きな欠陥があると考える。
念のために言うと、客室乗務員だけでなく、国際線で高空を飛行する一般乗客も同じ被ばくを受けるのである。
2025年は太陽フレアの活動が活発化すると言われている。
早めにこの問題の対策を行い、太陽フレアによる瞬間被ばくによるがん発生増加を抑制しなければならない。しかし、太陽フレアからのガンマ線は光と同じ速度で地球の大気上層に到達するのだから、今のパイロット並みの対策しかないのかもしれない。
(太陽フレアが発生したときに乗務していたことが分かったパイロットはしばらく乗務を停止する勤務調整をしているそうである。)
このままでは、がん発生のリスクに関し、最も危ないのは客室乗務員と頻回の一般利用客だけということになるのかもしれない。
6月13日追記
ではなぜ一般人より被ばく量の多い原子力従事者のがんが少ないか、という理由だが、これには2つの理由が考えられる。
ひとつは、ある程度、放射線を浴びている事で、がん抑制遺伝子の活動が活発化し、免疫機能が向上することである。
もう一つは、紫外線消毒と同様、ガンマ線を浴びることで、体内外の細菌が死滅し免疫機能に余裕ができて、前癌状態に対する応答に対応することが容易になると考えられることである。
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