原発避難計画の前提条件を見直すのが最優先ではないか2023年03月06日 10:20

 Yahooニュースによれば、大雪の際の原発事故の際、車の渋滞などの影響で困難となり予定通りの避難計画の実施が危ぶまれている。

 福島事故においては、避難の際の混乱で多くの事故関連死傷者が出た。これは、厚労省など関連部局の指示が混乱したためであるが、その前提条件である被ばく基準がICRPによる管理基準を採用したことが大きい。管理基準では一般人や放射線職業従事者の年間線量を規定しているが、事故時の特殊な状況における基準とはけた違いに小さい制限値となっている。その根拠も薄弱である。

 更に、ICRP基準そのものが、広島・長崎の原爆被ばく者の発がんデータに依拠している。これは、瞬間被ばくによる高線量率被ばくに対する身体影響のデータである。これと、原発事故のような長時間低線量率被ばくでは影響が大きく異なる。放射線がん治療は数十時間に亘る低線量率被ばくなので、健全細胞におけるがん発生は報告されておらず、がん細胞だけが損傷を受ける。

 このようなICRP基準に従って、避難計画を立てること自体が大きな問題である。即ち、原爆における被ばく状況と、原発事故による被ばくの混同をICRP自身が犯しており、その前提条件を見直さない限り、福島のように事故関連死は生じるが、被ばくによる身体影響は検出されないという問題が再度生じることになる。

 関係者は、ICRP基準の適用という前提条件から見直して避難計画を立案すべきである。